まつげが抜けやすくありませんか?
「目の周りのただれが治らない、ものもらいが繰り返しできてしまう、などの症状を訴える患者さんのまつげを2、3本抜いて顕微鏡で見ると、マツゲダニがいる場合が多くあります」と話すのは、患者さんの治療にあたりながら、まぶたの病気や加齢に伴う目の疾患の研究を重ねる加治優一先生。
マツゲダニという言葉に驚いてしまうが、どんなに清潔にしている人でも、20~40代で2人に1人、40歳以上の80%に寄生しているという報告があるほどポピュラーなダニ。いつも悪さをするわけではないと加治先生は話す。
「マツゲダニは、ニキビダニとも呼ばれます。私たちの体中の皮脂腺に寄生していますが、異常に増えてしまうと、目や肌のトラブルの原因になります。まつげは抜けやすくなり、肌はニキビダニといわれるように赤みが出て、ただれたりします。最も集中しやすいのが、まつげの根本部分なのでマツゲダニと呼ばれるのです」
なぜまつげに集中するのだろう。
「まつげの根本には、分泌液で眼球を守る役割をするマイボーム腺があります。その脂や湿り気がダニに快適な環境なのでしょう」
まぶたのただれなどの症状で眼科を訪ねても、アレルギー性や細菌性などによるものなのか、マツゲダニによるトラブルなのか、わかりにくいという。
それなら皮膚科にいけばよいのかと悩むが、どちらの領域ともつかないのが、まぶた周りの難しさなのだそう。
「目の周囲は、顔の中でもいちばん薄い皮膚です。使用できる軟膏も抗生剤やステロイド剤などほんの数種類に限られますが、マツゲダニのトラブルの場合には、それらの薬剤では治りにくく、増殖させてしまう可能性もあります」
では、薬でなければ、駆除するには、どうしたらいいのか?
「患者さんの目元を見るとアイメイクの洗い残しが見られます。目の周囲は洗っても、まつげの生え際まで行き届かず、毛穴を詰まらせてしまっています。まず敏感肌用や赤ちゃん用の石鹼でまつげの生え際まで、丁寧に洗うことを心がけてみてください」
ただ、あまり洗いすぎると、かえって皮膚がただれたり、カサカサになったりしてしまうこともあるので要注意。
また、エッセンシャルオイルの「Tea Tree Oil」でも、症状の改善が認められたという。
「化粧品グレードのシリコーンオイルで5倍に希釈したものを塗布することで、1カ月ごとにダニが半減していきました。自分で作ることは難しいため『Tea Tree Oil』入りの市販の洗顔剤など試してみてもいいでしょう」
マツゲダニは、ホコリに含まれるものや動物の体表に棲むダニとは種類が全く異なり、人から人に伝達されていくのだという。
「小さい頃に周囲の人などから頰ずりをされた時に移ったりしている可能性があります。愛情を受けた証なのかもしれません」
2019.03.25(月)
Text=Kaoko Saga(Lasant)