「わたし」という主語から
世代を超えた「わたしたち」へ
社会人2年目のマリコ、12年目のマリコ、20年目のマリコ。益田ミリの最新刊は、同じ職場で働く3人のマリコの視点をスイッチしながら、女性が会社で働くことの苦労と葛藤を描き出す。
20年目のマリコが、2年目のマリコを前に放つモノローグが象徴的だ。〈あの子はあの頃のわたし あの子は わたし〉。同じような感慨を、2年目のマリコも相手に対して抱いている。ただし、片や20代には戻りたくないと思い、片や訳知り顔の大人にはなりたくないと思う。大きな集団の中にいると、自分の所属している世代や集団とそれ以外とでなぜか対立させられてしまう心情が、怖いほどに写し取られている。
彼女達に必要な働き方改革は、トップダウン式の構造改革ではない。見えない対立をやめ、連帯するための意識改革だ。「わたし」という主語が、世代を超えた「わたしたち」になった瞬間、立ち上っていく革命ののろしに、問答無用で胸を熱くさせられる。
『マリコ、うまくいくよ』 (全1巻)
「近頃の若い子は」と嘆く上の世代の、若い世代に対する無理解。職場の飲み会に呼んでもらえるか否かで、女としての価値がジャッジされてしまう感覚……。仕事ぶりではなく、性別と年齢で人格を判断される息苦しさとどう向き合い、それをどう晴らすかもテーマのひとつ。
益田ミリ 新潮社 1,200円
Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2018.10.23(火)
文=吉田大助