リジェストランドハウスのことを一体どれくらいの人が知っているだろう? では、ウラジミール・オシポフは? ほとんどの人がどこの国の話だろうか? と思うはず。これはハワイに建つ歴史的建造物の家の名前であり、その建築家こそがロシア生まれのオシポフ。

ハワイの光と風を自由自在に操って、外の空間も家の一部のように思わせるオシポフマジックをこの広いラナイで感じて

 20世紀を代表するハワイの建築家で、父親の転勤にともない、日本に住んでいたこともある彼の作品は、たとえばインテリアにふすまを用いたりと和テイストを意識したもの。外と中の境界をなるべくなくすような設計で、日本のお城建築のようなイメージでしょうか。

 なおかつ、ハワイらしさを極限まで生かす。ため息がでるほど計算しつくされているのに、それを感じさせないロコスタイルです。

 数ある彼の建築は実はみなさんも見た事があるはず。ホノルル空港の中庭も彼のデザインしたもの。ワードエリアにある蜂の巣のようなIBMビルディングもそう。あの幾何学的なスクリーンは、ハワイの光と雨からビルを守るためのものでもあるんです。

 オシポフの名建築を語るときに欠かせない作品が個人宅として1952年に建てられたリジェストランドハウス。

 タンタラスの丘の上にぽつんと崖の一部のように建つその家は、下から見るとひさしが長いので、山の上に突然浮かぶ宇宙船のよう。

ちょっと暗いぐらいに感じるリビングは、外の景色をいちだんと際立たせる

 ひさしを長く作るのはオシポフ建築の特徴で、雨が入りづらく光を遮って、心地よい空間を作るため。また、彼の家作りにエアコンはあり得ないもの。ハワイの風を感じるために、風の通る方向に合わせて窓が作られているんです。日本からハワイへ来た瞬間、ほっぺたをすっと通る風の気持ちよさ、誰もが一度は感じたことがありますよね。ハワイの風こそがオシポフ哲学のすべてなのかもしれません。

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2012.05.22(火)