泣き叫ぶマンドレイクや
あの「許されざる呪文」の原形も
さらに進むと「薬草学(Herbology)」の部屋です。ここには、大英図書館に所蔵された薬草に関する古い資料が多く展示されています。
物語のなかでは殺人的な泣き声を放つ赤ん坊の形をした草の根として描かれていたマンドレイクですが、15世紀イタリア、またはドイツの文献のなかでは小さな成人男性として描かれているのが見て取れます。こちらのマンドレイクは、耳の穴に土を詰め込み、角笛を吹きながら、マンドレイクにつないだロープを犬に引っ張らせる、というのが正しい収穫法のようです。
薬草学のコーナーでもうひとつ注目なのが、17世紀に出版されたニコラス・カルペパーの著作「CULPEPER'S COMPLETE HERBAL(邦題:カルペパー ハーブ事典)」です。
当時の薬草に関する出版物は、知識層しか読むことのできないラテン語のものばかりだったのですが、カルペパーが初めてこの本を英語で記したことで、いままで高いお金を払って医者に処方してもらわざるを得なかった普通の人々が、自分たちで薬草を扱えるようになりました。現在も読み継がれている出版物としては、聖書の次に古い本とのこと。
ディープなハリポタ・ファンの方なら、ダイアゴン横丁の薬問屋、「ミスター・マルペッパーの薬問屋」を思い浮かべるかもしれません。
薬草学の次は、「呪文学(Charms)」の部屋へ。
ハリー・ポッターのなかでは、最も危険な「許されざる呪文」のひとつで、相手に死をもたらす「アバダ・ケダブラ」。一般的に知られる最も耳慣れた呪文「アブラカダブラ」と似ている、と思った方も多いのでは。それもそのはずで、「アバダ・ケダブラ」は、「アブラカダブラ」の語源であるアラム語で、「そのものは破壊される(May the thing be destroyed)」を意味している、と作者自身がテレビインタビューで語っています。
一方、お馴染み「アブラカダブラ」のほうは、死をもたらすのとは真逆で、ローマ時代にはマラリア除けのお守りに使われていたとか。三角形に書き綴ったものを首にぶら下げて身につけていたそうで、その原形をこの部屋で見ることができます。
右:ジム・ケイさんが描いたクィディッチの試合中のハリー(と背後に小さくマルフォイも)のイラストの上には、英国デヴォンに住んでいた女性オルガ・ハントさんが所有していたほうきが。満月の夜にこのほうきにまたがり飛び跳ねるオルガさんの姿が目撃されたといいます。
2017.12.23(土)
文・撮影=安田和代(KRess Europe)