クレオパトラにたとえられた
ワインを造る村へ

細い路地に面したワイン博物館。大きなワインの瓶(かめ)が目印だ。

 キプロスでは古くからワインが造られてきた。いくつかある「ワイン村」のなかでも、とくにワイン造りが盛んなオモドス村では、なんと紀元前2000年頃にはワインが造られていたという。

中にもワイン瓶が並んでいる。

 その歴史を知ることができる小さな博物館がある。細い路地に面して石を積み上げて造られた建物の中に、中世の搾汁器がそのまま保存されているのだ。入り口には大きなワインの瓶(かめ)が置かれている。

搾汁器は大きな棒と木製のネジでブドウを搾る。
ネジには細い棒があり、それを人の手で回す。

 中に入ると、ワインを貯蔵するためのワイン瓶が並び、中央にはブドウを潰すための搾汁器が置かれている。今でもワインを造り続けている「リノス」の搾汁器として使われていたものだ。

 搾汁器は石と木で作られている。木製の大きなネジを回して力を加えていくという仕組みだ。遥か昔のワイン造りの様子が偲ばれる。

 壁には実際にこれらを使ってワインを造っている写真が飾られていた。ワイン好きならぜひ見学してほしいキプロスの伝統だ。

 かつてはこのような搾汁器は村に数カ所あった。村人たちが自由に使えるようにと役所が造ったのだという。

壁に展示されているのは、実際のブドウ搾りの様子。

 このような搾汁器を使って、世界三大ワインのひとつ、コマンダリアがキプロスで生まれた。甘いデザートワインのコマンダリアは、「アフロディテのキスよりも甘い」と称される。絶世の美女と言われたクレオパトラに、ローマの軍人アントニウスは、「まるでキプロスの葡萄酒(コマンダリア)のように甘く優雅なそなたよ」と、愛を告白してキプロス島を贈ったという。

民家の庭先に置かれたワイン.瓶の上に美猫が座っていた。

 その先の路地を歩いていたら、庭先に置かれた古いワイン瓶の上に、毛並みのいい美猫が乗っていた。その、何とも絵になること! そんな風景を眺めつつ、散策していると、どうにもワインが飲みたくなった(笑)。

2017.10.31(火)
文・撮影=たかせ藍沙