メルボルン出身で、日本のコーヒー文化を愛する話題のコーヒーブロガー・ヴォーンさん。「音楽が最高!」と足繋く通う、最愛カフェの2人のオーナーに会いに行きました。
ジャズ喫茶という
日本の文化を知りたくて
◆Jazz Cafe & Bar DUG(ダグ)
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新宿の喧騒を払い除けるように地下へ潜ると現れる、ほの暗い琥珀色の空間。ここに時々通っては、ひとりレコードから流れるジャズに耳傾け、しっぽりコーヒータイムに耽るヴォーンさん。
欧米でジャズといえば夜、お酒を飲みながらライブを観る、クラブやバーが主流。静かにジャズとコーヒーを楽しむ風景は、日本ならではの文化だという。
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「店ができた1960年代は、都内に20軒くらいあったと思います」と教えてくれたのは「DUG」オーナーの中平穂積さん。まさにジャズ喫茶が日本を席巻した頃だ。
「当時はまだレコードが高価で給料の半分くらいの値段でしたし、木造の家では大きな音で聴けない。そこでみんな、ジャズ喫茶に集まったわけです」と話す隣で頰を紅潮させて聞くヴォーンさん。
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そう、彼にとってジャズ喫茶を営み、写真家として多くのミュージシャンを撮影してきた中平さんは、神様のような存在。
緊張の面持ちで「ライブ中だけでなく普段の、例えば彼らがコーヒーを飲んでいるような写真もありますか?」と尋ねると「僕はプライベートの時間に撮るほうが好きでね」と、中平さんは頷く。
「ライブ中は暗くて撮影しにくいこともあるけれど、一番の理由は、撮っていると全然音楽が耳に入ってこなくて、楽しめないから。僕はね、自分のことを写真家だと思ったことはない。でもみんながいい写真と言ってくれるのは好きだから」
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カフェオーナーや写真家である前に、まずはひとりの熱狂的なジャズファンであること。そのスタンスがヴォーンさんを熱狂させた。
「好きであることはとても大事。それは、いいカフェのすべてに言えること」
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<今日の1枚>
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『ライヴ・アット・ダグ』は伝説のジャズピアニスト、バリー・ハリスが1995年に来日した際、ベースの稲葉国光、ドラムの渡辺文男とのトリオで行なった「DUG」でのライブを収録したもの。
Jazz Cafe & Bar DUG(ダグ)
所在地 東京都新宿区新宿3-15-12
電話番号 03-3354-7776
営業時間 12:00~18:30(コーヒータイム)/18:30~23:30(バータイム) ※金土・祝前日は~翌2:00
定休日 無休
席数 40席
http://www.dug.co.jp/
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●GUEST
中平穂積(なかだいら ほづみ)さん
ダグ オーナー。1960年、日本大学芸術学部写真学科卒業。日本におけるジャズカメラマンの第一人者として活躍しながら、61年、新宿にてジャズ喫茶「DIG」開店。靖国通り沿いの店は2000年より現在に至る。
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●NAVIGATOR
ヴォーンさん
コーヒーブロガー、モデル、エディター、イベントオーガナイザー、文化服装学院の英語講師。コーヒーカルチャーの聖地オーストラリアで生まれ、日本在住10年。自身でコーヒーブログの運営も。
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2017.08.26(土)
Text=Mitsuharu Yamamura
Photographs=Wataru Sato
CREA 2017年9月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。