今回初披露される新作歌曲は
三島由紀夫のテキストを使用

オペラでは斬新で危険な演出をつけられた役も演じる中村恵理。歌曲のプログラミングにも彼女の勇敢な精神が反映されている。

 ピアニストは、彼女が専属ソリストを務めていたバイエルン国立歌劇場のコレペティトゥール(リハーサルの伴奏者で歌手への指導も行う)、リチャード・ワイルズ。作曲も行うワイルズが中村のために書いた新作も、リサイタルでは演奏される。

「ワイルズさんはバイエルン国立歌劇場で20世紀以降のオペラを上演するときに必ず稽古をつけてくれるピアニストで、劇場からの許可がないと一緒にリサイタルをすることが難しく、スケジュールが合うかドキドキでしたが、無事にやることが出来て嬉しいです。実は、彼が作曲家であることを知らなかったのですが、劇場のピアニストになる前に、ひとつオペラを書いているんです。このリサイタルのためにワイルズさんのほうから委嘱作品を書きたいと言ってくれました。歌詞は三島由紀夫のテキストで日本語なんです」

 歌手は声の成熟とともに、与えられる役が変わり表現が変わる。一生を通じて身体の変化とともに生きる、という意味でピアニストやヴァイオリニストとは異なるジャンルだ。いくつもの変化を受け入れて勇敢に大舞台をこなしてきた中村恵理には、大きな才能プラス、ある種の楽観性を感じる。

 4月には新国立劇場でモーツァルトの『フィガロの結婚』で10年ぶりにスザンナを歌う。6言語の歌曲への挑戦は、彼女の「フィールド」であるオペラにも影響を与えるはずだ。

東京オペラシティ リサイタルシリーズ
「B→C(バッハからコンテンポラリーへ) 中村恵理ソプラノリサイタル」


【東京公演】
会場 東京オペラシティ リサイタルホール
日時 2017年3月21日(火) 19:00~
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=7385

【兵庫公演】
会場 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール
日時 2017年3月25日(土) 14:00~
https://www1.gcenter-hyogo.jp/contents_parts/ConcertDetail.aspx?kid=4283513329&sid=0000000001

小田島久恵(おだしま ひさえ)
音楽ライター。クラシックを中心にオペラ、演劇、ダンス、映画に関する評論を執筆。歌手、ピアニスト、指揮者、オペラ演出家へのインタビュー多数。オペラの中のアンチ・フェミニズムを読み解いた著作『オペラティック! 女子的オペラ鑑賞のススメ』(フィルムアート社)を2012年に発表。趣味はピアノ演奏とパワーストーン蒐集。

 

Column

小田島久恵のときめきクラシック道場

女性の美と知性を磨く秘儀のようなたしなみ……それはクラシック鑑賞! 音楽ライターの小田島久恵さんが、独自のミーハーな視点からクラシックの魅力を解説します。話題沸騰の公演、気になる旬の演奏家、そしてあの名曲の楽しみ方……。もう、ときめきが止まらない!

2017.03.17(金)
文=小田島久恵
撮影=山元茂樹