バーボンの故郷で蒸留所を巡る
ダム湖にボートで繰り出し、トレイルにいる野生動物を見て、馬にも乗り、アウトドアを楽しんだケンタッキー州。自然に恵まれ、ケンタッキーダービーの開催地として馬も有名だが、もう一つ忘れてはならないのがバーボン・ウィスキーだ。
バーボンと名乗るためには、1964年のアメリカ連邦議会で決められたという細かい定義に則っていないといけない。例えば「原料の51%以上がコーンであること」「樽での熟成は2年以上」そして「アメリカ合衆国で造られていること」など。バーボンのほとんどがケンタッキー州で造られている。
ホプキンスビルにある家族経営のウィスキー蒸留所を2軒回る。1軒目は、「ケイシー・ジョーンズ・ディスティラリー」。
祖父がスティルと呼ばれる蒸留器を作る職人で、家族でウィスキーを作って楽しんでいたが、2014年に酒造免許への規制がゆるくなったのを機にウィスキー蒸留所としてスタートしたという、まだ新しいブランドだ。
ここは、まだ8カ月と熟成が進んでいないウィスキー、ムーンシャインや、それに砂糖を加えたウィスキーを出している。つまり、ここのウィスキーは、バーボンではないわけだ。しかし、ピュアでストレートな味は、それはそれで結構いける。
Casey Jones Distillery
(ケイシー・ジョーンズ・ディスティラリー)
所在地 2813 Witty Ln, Hopkinsville, KY 42240
電話番号 270-839-9987
https://www.caseyjonesdistillery.com/
右:ポール自身、アーミッシュだという。スモーク・コーンで造ったバーボンを樽からとって試飲。香ばしく深い味わいがいい。飲み残しは、祝福のために樽にかけるのが習わし。
2軒目は、「MBローランド・ディスティラリー」。ここは、ケンタッキー・バーボン・トレイル・クラフトツアーというバーボン・ウィスキー蒸留所巡りのツアーの行程にも入っている。
ポール&メリー・ベス(MB)夫妻がアーミッシュの農場を買い取って、2009年からスモークしたコーン、大麦、ライ麦などを使って、バーボンとウィスキーの両方を造っている。
MB Roland Distillery
(MBローランド・ディスティラリー)
所在地 137 Barkers Mill Rd, Pembroke, KY 42266
電話番号 270-640-7744
http://mbroland.com/
最後に立ち寄ったのは、1935年創業のバーボンの大手メーカー「ヘブンヒル・ディスティラリー」。
ヘリテージセンターと呼ばれる蒸留所の見学もできるし、レクチャーを聞きながら試飲のできる施設もある。5万ものバレル(樽)を寝かせている建物が何棟も立ち、バーボン、ウィスキー、ブランデーやコニャック、ジンなどのハードリカーを造っている。
試飲を含む蒸留所見学ツアーは20ドルかかるが、希少なことから幻のバーボンと言われるヘンリー・マッケンナ スモールバッチという少量生産のバーボンや、25年もののオールドウィスキーなど、なかなか口にできないようなウィスキーを含む4種類のバーボンを出してくれた。ヘンリー・マッケンナは、バニラやキャメルの風味を感じる滑らかでまろやかなバーボンだった。
Heaven Hill Distillery(ヘブンヒル・ディスティラリー)
所在地 1311 Gilkey Run Rd, Bardstown, KY 40004
電話番号 502-337-1000
http://www.heavenhill.com/
最後はバーボン・トレイルで終えたミシシッピ川3州の旅。現地の人も老若男女、自然を満喫していて、トム・ソーヤーのような遊び心は今も健在なのだ。
【取材協力】
ミシシッピ・リバー・カントリーUSA 日本事務所
http://mrcusa.jp/
小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel
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2016.11.29(火)
文・撮影=小野アムスデン道子