放送が開始するや否や「素晴らしすぎて同時代を生きられていることに感謝」「これが日本アニメでとても誇らしい」など、国内外から絶賛の声が相次いだTVアニメ『天幕のジャードゥーガル』。トマトスープ氏による同名漫画を原作とする、13世紀のモンゴル帝国を舞台にすべてを奪われた少女が知恵を武器に復讐を誓う歴史大河ストーリーだ。

 本作はなぜこれほどまでに視聴者の心を掴んでいるのか。ついに最終回を迎えた今、本作を手がけた山田尚子総監督に、制作の舞台裏を聞いた。(全2回の2回目/初めから読む

※本記事は最終回のネタバレを含みます

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「奴隷」や「ヘナ」の描写に込めた思い

――第1話から、奴隷という境遇にあるシタラが、決して単なる不幸の象徴としてではなく、街の人々と関わりながら豊かな表情を見せて暮らしている姿が描かれていたのが非常に印象的でした。

 現代の私たちの感覚からすると、「奴隷」という言葉を聞くだけで非常に暗く恐ろしいイメージを抱いてしまいますし、身構えてしまいますよね。ですが、時代や地域、文化によって、その実態や社会的な位置づけは大きく異なります。当時のペルシア社会における奴隷の制度について学んでいくと、現代の先入観とは異なり、一定の生活権や生業が認められていたり、人間としての尊厳や役割がしっかりと与えられていた側面もあることを知りました。そうした歴史的事実を偏見なく学び、当時の価値観に敬意を払いながらフラットに描写することを心がけました。

――画面の細部を見ても、例えばペルシアの女性たちの指先に施された「ヘナ(植物染料による装飾)」など、過剰な説明台詞を挟まずに文化のディテールが美しく溶け込んでいましたね。

 気づいていただけて嬉しいです。ヘナの染料などもそうですが、この作品には観てくださる方が「これは何だろう?」と興味を持つきっかけとなる種が、画面のいたるところに散りばめられています。アニメをきっかけに「当時の文化をもっと知りたい」「調べてみたい」と思っていただけるような豊かなフックをたくさん作ることができたのは、原作の持つ力と、スタッフ全員の丁寧なリサーチの賜物だと思っています。

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