SNSでも大人気のパーソナルスタイリスト・安井百合子さんは「着こなしのルールを覚えてもセンスのいい人にはなれない」と語ります。では、“センスよく見える人”ではなく“センスのいい人”になるにはどうしたら?

 センスを育てるための具体的なアクションや実例が満載の『コンプレックスを飼いならして「好き」を着こなす センスのトリセツ』(安井百合子著/高橋書店)より、センスを磨くために避けては通れないテーマ「自分を知ること」について、一部抜粋・転載します。

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 センスを磨くうえで、避けて通れないテーマがあります。

 それは、自分を知ること。なぜなら、センスとは流行を知っていることや、服をたくさん持っていることで磨かれるわけではなく、自分という人間をどう表現していくか試行錯誤することによって育つものだからです。

 では、自分を表現するためには何が必要でしょうか? そう、自分自身を知ることです。同じ服でも、着る人が変われば印象がまったく違う。服そのものよりも、着ている人のありかたが、装いの印象を左右します。

 だからこそ、自分にはどんな個性があって、どうありたいのかを理解しておくことが、自分らしい表現の出発点になります。

ファッションは、自分を表現する言葉

 ここで、センスとファッションを改めて定義しましょう。

 センスは生まれつきの才能ではなく、物事に関心を持ち、見て、感じて、蓄えてきた知識に基づいて、好き嫌いを判断する力です。ファッションは、身につけるもので、そのセンスを表現する行為です。つまり、ファッションとは、あなたの内側にあるセンスを外側に向かって翻訳するためのメディアです。

 おもしろい逆説ですが、服は外側から取り入れるものでありながら内側から表現できたときに初めて意味を持ちます。先述しましたが、語学と一緒ですね。新しく学ぶ言語は環境や教科書、映画などから習得しますが、ただ暗記して例文をなぞるだけでは、その言語に堪能とは言えません。自分の意見を語れて初めて、その言語は自分のものになります。

 ファッションも同じ。誰かの真似をするのではなく、「着る人=あなた」のセンスが装いに翻訳されて初めて、ファッションが自分を説明するメディアに変わるのです。センスのいいファッションとは、似合う服を探す作業ではなく、自分を上手に表現する遊びなのです。

顔立ちや体型に合っているのが、似合う服ではない

 「そんなことより早く自分に似合うアイテムを知って、センスのいいファッションをものにしたい」と気がはやりますか?

 落ち着いてください。自分のことを知らないままでは、どれだけ服のことを学んでもセンスのいい人にはなれないのです。

 そもそも、似合うとは何でしょうか? 顔立ちや体型に合っているかどうかを指すのではありません。似合うとは、その人の判断と価値観が、装いと矛盾なく一致している状態を意味します。どれだけ外見的に整っていても、本人の好き嫌いの判断と切り離された服は、どこか借り物に見えます。逆に、一見クセのある装いでも、その人の知識や関心に裏打ちされていれば、説得力を持って成立します。

 それこそが、ファッションの醍醐味。ファッションは、似合う服を探す作業ではなく、自分のセンス──つまり、好き嫌いの判断を形にしていくプロセスなのです。だから本章で行うのは、似合う服探しではありません。自分が何に反応し、何を美しいと感じ、どんな基準で良し悪しを判断しているのか、その輪郭をつかむ作業です。

 では、自分を知るために、まずは何をすればいいのでしょうか? カギになるのは、あなたの「好き」を言語化することです。自分の好きの理由が言葉になると、不思議と自己表現の楽しさが見つかり、自分の魅力と響き合うアイテムも自然と見えてきます。

 さあ、早速始めていきましょう。

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