ずばりと本質を突く言葉と、愛のあるメッセージが支持され、SNS総フォロワー数22万人を誇る大人気パーソナルスタイリスト・安井百合子さん。

 2026年4月には初の著書『コンプレックスを飼いならして「好き」を着こなす センスのトリセツ』(安井百合子著/高橋書店)を刊行し、こちらも話題を集めています。

 実は3年前まで「パーソナルスタイリスト」という仕事すら知らなかったという安井さん。多くの人を惹きつける言葉はどこから生まれるのでしょうか。これまでの歩みやファッションへの思いについて聞きました。

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» 『センスのトリセツ』より「自分を知ること」について


「トドみたい」夫のひと言で人生が変わった

――パーソナルスタイリストになる前は、どんなキャリアを歩んできたのでしょうか。

 実は私、高卒なんです。高校3年生の時にアメリカへ留学していて、そのまま進学するという選択肢もあったのですが、準備をしていなかったので帰国しました。アメリカ生活で7~8キロ太ってしまったこともあり、帰国後は「痩せたい」という単純な動機で(笑)、スポーツジムのトレーナーになりました。

 その後、姉と一緒に伊豆へ移住し、飲食店で働きました。今でいうワーケーションですね。毎日たくさんのお客様と接する中で、「自分には接客が向いている」と初めて実感しました。

 24歳の時に再び東京へ出てきて、派遣会社に登録したところ、英語を生かせる貿易事務の仕事を紹介されました。それが、海外ブランド向けのファッション展示会を運営する企業です。海外のデザイナーや商社とのやり取りのほか、展示会の出展手続きやブース配置などを担当していました。一度に500~600社が出展する展示会を年に2回開催していて、「このブランドならここが映える」「この色なら隣はこのブランドがいい」といったレイアウトを考えるのも仕事の一つでした。

 この経験を通して学んだのが、「何を売るか」と同じくらい、「どう見せるか」が大切だということです。どれだけ素晴らしい商品でも、人が集まらないブースがある。一方で、ごく普通の商品でも、人が絶えないブースがある。その違いは、デザイナー本人が立っていたり、積極的に声をかけていたり、ブランドの世界観やストーリーが伝わる工夫がされているかどうかでした。「見せ方で損をしている会社が多い」と感じたことをきっかけに、VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)の方を招き、ブースの見せ方を相談できる機会を設けたこともあります。

――いまのお仕事に繋がっていますね。

 そうですね。30歳で結婚を機に会社を辞め、その後、3人の子どもを出産しました。20代の頃は今より20キロ以上痩せていたんですが、仕事のストレスで少しずつ体重が増えていって……。出産を重ねるうちに、体重が落ちにくくなりました。

 3人目を出産したのはちょうどコロナ禍。幼稚園も休園になり、一人で子どもたちの面倒を見ながら、乳腺炎にもなってしまって。子どもが1人だったときは毎日のようにベビーカーを押してウォーキングしていたのに、3人になるとそんな時間も取れなくて。体重も戻らないまま、自分の身なりにも構わなくなっていました。

 ある日、夫に「トドみたい」と言われたんです。もともとそういう冗談を言う人なので、悪気はありません。でも、当時の私は産後クライシスもあって、笑って受け流せなかった。

 「トドみたい」と言われて、「100倍愛情表現してから言いなさいよ」とも思いました。でも、図星だったんです。これは美しい夫婦関係ではないし、子どもたちに見せたい夫婦の姿でもない。なんとかしなくては、と思いました。

 そのときに見たのが、プラスサイズモデルのアシュリー・グラハムのTEDトークです。

 アシュリーのことは結婚前から知っていました。ウェディングドレスを着るうえで自分の体型にコンプレックスがあって、プラスサイズモデルを検索したことがあったんです。その時に彼女を見つけて、「この人より私のほうが細いから大丈夫」と思っていたんです(笑)。

 それから数年が経ち、アシュリーのスピーチを聞いて、涙が出るほど感動しました。自分のグラマラスな体型を愛し、とても知的で堂々としていて、「こんな風に生きたい」と思いました。

 そこから“ボディポジティブ”について調べるようになりました。プラスサイズモデルの方たちが発信している言葉を読むと、体をないがしろにしているわけではなく、それぞれが自分なりの“ヘルシー”を大切にしているんですよね。私もポジティブな言葉で自分を養っていたら、徐々に心が健康を取り戻していって。

 自分の不完全さを受け入れられるようになると、夫の不完全さも受け入れられるようになります。夫のことも許して、愛そう、支えようと思えるようになって。そして「今のこの勢いで何か事業をつくってみよう」と思ったのです。アシュリーのTEDに出会ってから、その気持ちになるまで2週間もかかりませんでした。

――展開がスピーディーですね! 起業しようと思ってからは、どんな風に動き始めたんですか?

 まず、夫に「ファッションで起業しようと思うんだけど、どう思う?」と相談しました。最初は全然相手にされませんでしたけど。その後、3つの起業塾に個別相談に行きました。当時の私は、Instagramでファッション投稿をして、アフィリエイト案件を受けるくらいのイメージがなかったのですが、3社とも同じことを言われたんです。「アフィリエイトよりも、ご本人をブランドにしたほうが絶対に売れますよ」と。

 そして、3社目ですすめられたのが「パーソナルスタイリスト」です。私は「何ですか、それ?」というところからのスタートでした(笑)。そこからパーソナルスタイリストについて調べ始めて、養成スクールに入りました。2023年6月に起業を考え始めて、8月にこの仕事を知り、1カ月調べて、10月には入学していました(笑)。

 改めて夫に「パーソナルスタイリストとして仕事をしたい」と話したとき、「それが仕事として成り立つ根拠はあるのか」と聞かれました。その時の光景は、今でもよく覚えています。夫は床でくつろいでいて、私は立ったままで「根拠は私よ」と言ったんです。「私ならやると思うでしょ?」って。すると夫は、「まあ、それはわかる」と(笑)。

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