若手時代はやる気が空回って死にそうになったことも

――本作で推理ショーに挑む解答者は、一度失敗してしまうと賞金獲得のチャンスを剥奪されてしまいます。唐沢さんは、印象に残っている大きな失敗はありますか?

 失敗なんてたくさんありますよ。糧にもなってない失敗だらけ。10代の頃、スタントマンなどを育成する「東映アクションクラブ」というところにいたんです。ちょっと演技ができるエキストラとして呼ばれて行ったら「兵隊の格好をしたまま真冬の海で溺れてくれ」って指示されて。ボートに捕まろうとすると、オールでがんがん落とされるんです。

 どうしても映りたくて、溺れる演技をしながらも上半身を水面に出してたんですが、監督に『お前、溺れてんのにここまで体を出すやついねぇだろ』って怒られまして。1キロの砂袋を両腰につけられたんです。「俺、不死身なんで大丈夫です!」とか言って強がっていたら、ぶくぶくぶくって勢いよく沈んでしまって。あれは本当に死ぬかと思ったね。死ぬってこういうことなんだな、と。

 ここまで体を張ったんだからと、その映画を劇場に観に行ったらカットされてどこにも映ってなかった(笑)。悔しくてパンフレットを買ったら、もう人とは思えない顔で溺れている僕が載ってました。そのパンフレットは記念に、今でも家に残しています。

――すさまじい経験をされていますね。

 今はあそこまでのことはなかなかできないかもしれないね。特にテレビはルールが厳しいですし。例えば1分1秒を争うシーンでも、車に乗る時はシートベルトを締めたところをきちんと撮影しないといけない。僕だったら車に乗り込んだらすぐに車が走り出すカットに切り替えるけどね。でも本作は、なんでもありで楽しかったですよ。

――そうした自由度の高さも、本作の魅力につながっていますね。劇中では全国民が熱狂する推理ショー『ミステリー・アリーナ』が描かれていますが、もし実際に放送されていたら、ご覧になりますか?

 単純に視聴者だったら、楽しめるでしょうね。裏で何が起きているのかなんてわからないから。年末に生放送されている設定ですよね。家族とああでもない、こうでもないと言いながら見たらめちゃくちゃ盛り上がりそう。

 完成した作品を改めて観ましたけど、釘付けでした。ただ、芦田愛菜ちゃんにずっと感情移入して観るタイプの物語でもないところが、この映画の不思議な魅力だよね。俯瞰的な視点をくれるというか。ミステリー好きはもちろん、普段あまり観ない方にもぜひ楽しんでもらいたいです。

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唐沢寿明(からさわ・としあき)

1963年6月3日生まれ、東京都出身。1987年に舞台『ボーイズレビュー・ステイゴールド』で俳優デビューし、森田芳光監督作の『おいしい結婚』で映画デビュー。NHK大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語~』や『白い巨塔』、連続テレビ小説『エール』、『プライベートバンカー』、『コーチ』など多数の作品に出演。

映画『ミステリー・アリーナ』

監督:堤幸彦
原作:深水黎一郎
出演:唐沢寿明 芦田愛菜 三浦透子 鈴木伸之 トリンドル玲奈 /浅野ゆう子
2026年5月22日(金)全国ロードショー
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衣装クレジット

ジャケット 264,000円、シャツ 41,800円、パンツ 49,500円/すべてSARTO

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