ドラマ『白い巨塔』出演時は、江口(洋介)くんと相談し合った

――踊りといえば、脚本には踊る設定もなかったそうですね。

 そうそう。踊った方がより、樺山という男のあやしさが出ると思って。

――稀代の天才起業家で大のミステリーオタクであり、場を盛り上げる司会者である樺山桃太郎を演じるにあたり、アフロヘアも唐沢さんから提案されたと伺いました。

 最初の衣装合わせではタキシードを着たんですが、なんかしっくりこなかったんですよ。原作や脚本を読んだ時に、僕の中で樺山はステージ上で踊りながら叫んでいるような人間だというイメージが出来上がっていて。「踊りといったらアフロでしょ」ってなっていったんです。若い子たちにはいつの時代の話だよって突っ込まれちゃうかもしれないけど(笑)。

 あとアフロにすると、一目で唐沢だとわからないのもいいと思ったんだよね。僕そのまんまのビジュアルだと、観客のみなさんが普段の僕と樺山を重ねてしまうかもしれない。それは避けたかった。

 演じていてこれは「救いようがないな」と思ったくらい、彼は人格的には最悪な男。思い込みが激しくて歪んだ正義を持っています。いわゆる認知の歪みが起きちゃってる。よく取材をしていただくときに「演じる役と重なる部分はありますか?」とか聞いてもらうことが多いんですが、今回に限っては共感ポイントは一切ないです。でも、こういった役を演じるのは嬉しいですよ。共演者の皆さんを罵倒するのは楽しかったなぁ。めったにないことですから。浅野ゆう子さんに一瞬本当にむっとした顔をされたような気もするけどね(笑)。

――先ほどもお話が出た、ドラマ『白い巨塔』は、当時大ヒットした話題のドラマでした。唐沢さんのキャリアにおいて重要な作品ですか?

 忘れられない作品ですね。当時、オファーをもらった時は、まだトレンディドラマ全盛期だったから、社会派ドラマってどうなんだろうって思ってたんです。でも共演者の江口(洋介)くんと何度か飲みに行って「俺たちももういつまでもトレンディドラマやっているわけにはいかないから、社会派のドラマでもきちんと対応できるように頑張ろう」って話していて。それが蓋を開けてみれば大ヒット。少し不思議な感覚でしたけど、自信には繋がりましたね。

 その後、同じく山崎豊子さん原作のドラマ『不毛地帯』でも主演をやらせていただいたんです。『不毛地帯』ってシベリア抑留が背景になっているから、地獄のように人間がいじめられているシーンもあって、同じ社会派といっても『白い巨塔』とは全く雰囲気が違う。だからこっちの方は視聴率で苦戦しました。山崎さんからは『唐沢どうした?』って言われていたみたいだけど(笑)。

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唐沢寿明(からさわ・としあき)

1963年6月3日生まれ、東京都出身。1987年に舞台『ボーイズレビュー・ステイゴールド』で俳優デビューし、森田芳光監督作の『おいしい結婚』で映画デビュー。NHK大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語~』や『白い巨塔』、連続テレビ小説『エール』、『プライベートバンカー』、『コーチ』など多数の作品に出演。

映画『ミステリー・アリーナ』

監督:堤幸彦
原作:深水黎一郎
出演:唐沢寿明 芦田愛菜 三浦透子 鈴木伸之 トリンドル玲奈 /浅野ゆう子
2026年5月22日(金)全国ロードショー
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衣装クレジット

ジャケット 264,000円、シャツ 41,800円、パンツ 49,500円/すべてSARTO

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