松尾スズキさん演出による舞台『カッコーの巣の上で』に挑む坂東龍汰さん。後篇では、役柄とも重なる家族との関係や、幼少期に過ごした環境、そして作品が投げかける「自由とは何か」という問いについて語ってもらいました。人との距離感や心を開くことへの考えなど、坂東さん自身の素顔にも触れていきます。

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おもちゃは一つだけだった少年時代

――今回演じるビリーは、母親との関係に問題を抱えています。坂東さんは「アナザースカイ」でも共演されていたように、お父さんと仲良さそうですね。

 そうですね。うちは親が怖くて関係がこじれる、ということはなかったです。対等で言いたいことは言い合える関係です。でも、反抗期ががっつりあって、かなり激しい衝突もしました。家出もしましたけど、田舎育ちなんで、街を3周くらい歩いて帰ってくるだけ。無断外泊まではできなかったなぁ。

 父親より母親の方が厳しくて、悪いことをしたらきちんと叱ってくれる人でした。僕が家出すると追っかけてくるのは父親なんですが、それは母親に行けって言われたからで。父親は「好きにさせておけばいいんじゃない?」ってスタンスだったと思います。

――坂東さんはシュタイナー教育の学校に通われていたんですよね。テレビなどは禁止されていたそうですね。

 そうなんですよ。なので絵本を読んだり、自然と戯れたりしてました。金槌を叩いてナイフを自作して魚を捌いたり、家の目の前の海に打ち上がったトドを見に行ったり。おもちゃがないなら、手を動かして自分で作っちゃえ! の精神でした。父も、ニューヨークから北海道に引っ越してきて、何もないところに自分で家を建てるような人なので、そういった点は影響を受けているのかもしれないですね。

 自然豊かな場所で遊べて楽しかったけど、欲しいものを一つも買ってくれない家でした。おもちゃなんて青のチョロQ一つだけだったかもしれない。おじいちゃんが買ってくれた仮面ライダーのおもちゃを取り上げられたこともあります。あれは悲しかったですね。

 シュタイナー教育ってテストや教科書がないとか、すごく自由なイメージがあると思うんですが、実際にはそうとも限らなくて。自由であることの難しさも感じていました。

――本作『カッコーの巣の上で』も「自由とは何か」を問いかけてくる作品ですね。坂東さんにとって、心地良い自由とは?

 難しい! 好きになるってどんなこと? って聞かれるくらい難しいですね。作品に重ねて考えると、周りを気にせずに自由に生きすぎると、逆に自分にとって不自由な環境を作ってしまうこともありえるのかな、と。だから自由って本当に難しい。

 小さなことでいいなら、時間に追われずにのんびりお風呂に入っているときに感じるかも。何も考えなくていい時間はやっぱり幸せだし自由を感じますね。地方に移動するだけでいい日とか、めっちゃわくわくしちゃいます。

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