“まことくん”なる先輩を語る先輩たちの口調
「うん、すごく明るい奴だったから嬉しかったな」
“まこと”なる人物について語り合う先輩たちのどこか舞台じみた口調。
寸劇形式で怖い話でもしているのだろうと合点したDさんでしたが、どうにも話が怖い方向に転じていかないことに徐々に違和感を覚えていきました。
むしろ、話は過去の楽しかった思い出話に進み、延々と“まことくん”を誉めそやしていたのです。
彼がいかに愛想が良く、いかに爽やかで、いかに面倒見が良かったか。笑い混じりなものの、どこかしんみりと彼の思い出を噛みしめている様子の先輩たち。
このときになって初めて、下を向いている同級生たちの表情がどれも困惑して縮こまっていることに気がつきました。
「ちょうど1年前だよね」
「そうですね。今みたいな夜中にまこと先輩に肩叩かれて起こされました。先輩、着替えて俺の横に座っていたっけ」
「寝間着のジャージじゃなかった時点で気がつくべきだったね」
「はい。で、先輩『ちょっと出てくるな』ってロッジの外行って……」
言葉を詰まらせる2年生のS先輩。
「それっきり、か」
その言葉をつなぐように合いの手を入れたI先輩。
Dさんは、話や状況が整理されていくにつれて、浮かび上がる思いに戸惑いを隠せないでいました。
それは、話に出ている“まことくん”なる先輩が、どう考えてもこのキャンプ場で行方不明になっているとしか思えないということでした。
» (後篇に続く)
