ジュースを買った後に気づいたのは…

 5、6分歩を進め、心地よい喧騒が鳴りを潜めて静寂が彼女を包み始めた頃、田んぼに続く一本道の先に自販機の明かりが見えました。

 ジュースを発見。ガコン、ガコンと音を鳴らしながら買い込み、最後の1本を袋に詰め終わって顔を上げたとき、田んぼの向こうに1組の人影を見つけたそうです。

 辺りに誰もいないと思っていたので、一瞬ギョッとしてその人影の後ろ姿を見つめていると、それが若い男女であることがわかりました。

「地元の人かな」

 やけに2人から目線が離せないのには、理由がありました。

 男が前、女が後ろで、妙に距離を空けながら歩いているのが気になったのです。

 ふと、後ろを歩いていた女が前を歩く男の左肩に手を乗せるのが見えました。

 疲れて手を置いているのでも、じゃれ合うように触っているのでもない。無言で肩に手を置きながら、ゆらゆらと歩いているのです。

 なんとなく首筋と背中に不穏な気配が忍び寄るのを感じ、踵を返したDさん。

 なぜか、今見た光景が不確かな夢の景色のように思えてしまった彼女は、確かめるように再び後ろを振り返りましたが、すでに2つの人影は消えていました。

次のページ 「もう、準備できているから」