高尚なSF大作『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)を成功させてアラサーに差しかかっても、反骨精神はなくならなかった。それまで、ティモシーはメディアであまり喋らず、上品でミステリアスなイメージを保っていた。これはハリウッドの典型でもある。「映画館でしか観られないスター」としての希少価値を守るため、過剰露出は避けたほうが無難とされる。

 一方、ティモシーが憧れているミュージシャンたちは自由にファンと交流し、メディアでもくだけた口調で、野心を隠したりもしない。そうした泥臭さこそが若いファンを夢中にさせているのだ。娯楽が増えて映画館離れが進む近年、俳優の人気が彼らに完敗してしまっているのも無理はないかもしれない。

 だからこそティモシーは打って出た。映画の未来を担うスターとして、若者を映画館に集めるべく「キャラ変」を行ったのだ。

ついに「キャラ変」…シャラメが破った数々の“慣例”

 ティモシーは数々の慣例を破っていった。まず、スポーツ解説番組に出て見事な大学アメフト知識を披露。リベラルなハリウッドスターたちが忌避していた保守寄りの男子向けPodcastにも出演した。くわえて、豊胸手術を公表している派手なインフルエンサーであり億万長者の恋人カイリー・ジェンナーとも授賞式などで堂々といちゃつくようになった。

 決定的な瞬間は、伝説的歌手ボブ・ディランを演じた『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2024)によって全米俳優組合賞の主演男優賞に輝いた際の受賞スピーチ。「品良く控えめに語るべきなのかもしれませんが……」と前置きしながら、名だたる名優や伝説的アスリートと並ぶ「偉大な存在」を目指すと宣言したのだ。

 業界内外で反発を受けてもティモシーは止まらず、むしろ加速した。役づくりのためにトレードマークだった巻き毛を剃り、卓球選手を演じた『マーティ・シュプリーム』の宣伝期間に入ると、ファッションもストリート系に。

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