ないのを承知でディナーメニューを頼んでみると……
そしてアメリカ料理といえばハンバーガーを頼まなくてはいけない。「Wood Grilled Hamburger」(17ドル)を一口齧ると、肉の香りが爆発し、その後から炭火の香りが鼻に抜けた。パテもバンズも石窯で焼いているので、実に香ばしい。
ミディアムレアの焼き具合も精妙で、フライドポテトは芋の甘みに富んで、カラリと油切れよく揚げられ、添えられたバジル風味のアイオリソース(にんにく風味のマヨネーズタイプのソース)をつければ、パテの味を膨らまして、さらに食欲を煽ってくる。
「カスタードフレンチトースト」(18ドル)は、表面が見事なまでにカリッと焼かれ、中はムースのようにしっとりとした、均一な食感に仕上げられている。一口で顔が崩れ、笑い出してしまう。東京でも、ここまで完璧なフレンチトーストは少ない。また、添えたメープルバターの香りとリンゴソテーの甘酸味がこの料理に合って、憎いんだな。
ないのを知りつつ「ロティサリーチキンはできないか」と交渉してみた。すると「申し訳ない、昼はできないんだ」とウェイターが謝る。だがその言葉だけでは済まさなかった。
「今日の夜はどうしているんだ? 深夜1時までやっているから、夜遅くにでも来ないか? 席を取るから。味は俺が保証するぜ」と、満面の笑顔で言う。味だけではない、ホスピタリティのすばらしさ。混む理由がわかった。
NOPA(ノ-パ)
所在地 560 Divisadero St, San Francisco, CA 94117
電話番号 415-864-8643
URL http://www.nopasf.com/
<サンフランシスコ>
1年中、温暖な気候に恵まれ、年間の晴天の平均が300日という、ほとんど雨が降らない都市。もっとも夏の間は水温と外気温の差により霧が発生することから、「霧の町」ともよばれる。1769年にスペインに偶然発見されたのがサンフランシスコの始まり。そしてカリフォルニアは、1850年に31番目の州としてアメリカ合衆国に併合された。その後、ゴールドラッシュで町は発展、ヒッピーをはじめとするカウンターカルチャーもここから起こり、いつの時代でも新しい情報を世界へ発信する都市として知られている。国際色豊かな3000以上のレストランがあり、美食の都市としても有名。
日にちを限定しないならば、サンフランシスコへの往復運賃最安値は5万円台(「スカイスキャナー」調べ)。お気に入りのレストランの予約を取ってから、旅行の計画を立てるというのも、楽しい旅のひとつの方法だ。
マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百店」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。
Column
マッキー牧元の「いい旅には必ずうまいものあり」
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く「タベアルキスト」のマッキー牧元さんが、旅の中で出会った美味をご紹介。ガイドブックには載っていない口コミ情報が満載です。
2016.02.19(金)
文・撮影=マッキー牧元