温泉街の魅力を引き出す撮影のコツ 結論
「最後に見つける楽しみとその注意点」

下駄と浴衣の足元だけ温泉の雰囲気がでるように撮影した写真。女性客は浴衣が自由に選べる宿が多く、それを着て外湯に行くのも楽しみのひとつ。

 温泉街には写真的要素が数多くあるが、その中でも自分だけが見つけたものを撮影する喜びがある。そして、見つける力が付いてくると動体視力もよくなって、見つけてはいけないものまで見つけてしまうことがある。

 特に人のスナップ写真。例えば、「あれ、今、通ったのは嵐のニノじゃない?」など動体視力も良くなってしまう温泉効果(笑)。お湯がいい城崎温泉となれば、お忍びで来ている人たちも多いはずだ。

 パパラッチ志望の人なら柳の木の下での張り込みや大谿川に潜水して水中からパチリ! なんてことを考えるだろうが、せっかく楽しんで旅している人を不快にさせてはいけない。どうしても撮りたい人がいたら、一声かけて撮影させてもらうとよいだろう。

温泉寺の薬師堂から街の方向を見るとほんの少し下り坂になっている。ローアングルで撮ると立体感が出る。

 しかしながら、もし毎年11月初旬に豊岡市出石町の永楽館歌舞伎で公演する片岡愛之助さんと噂の藤原紀香さんが手をつないで歩く姿を見つけてしまったら、私もパパラッチになるか、ここに記したスナップ写真の礼儀を守るべきか、大いに悩むことになる~!(笑) 

 やはり大きな声をかけて礼儀正しく、そしてどこまでも追いかけるパパラッチ精神の両方を培わねばならないのがプロの写真家かもしれない。そんなことを考えながら外湯めぐり中。あ~、いい湯だな~。

外湯「柳湯」前の川の対岸からカメラを固定して撮ると、動画のように行き交う人々が撮れる。下駄の音が聞こえるような写真を心がけてみるとよい。

 以上。次回は何のコツをお教えしようかと検討中。旅先の写真撮影でこんな時どうしたらいいの? など、取り上げてほしいテーマがあれば、CREA WEBの「掲載記事へのご意見・ご感想」フォームからご意見をお寄せください。

山口規子(やまぐち のりこ)
栃木県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、文藝春秋写真部を経て独立。現在は女性ファッション誌や旅行誌を中心に活躍中。透明感のある独特な画面構成に定評がある。『イスタンブールの男』で第2回東京国際写真ビエンナーレ入選、『路上の芸人たち』で第16回日本雑誌写真記者会賞受賞。著書にひとつのホテルが出来上がるまでを記録したドキュメンタリー『メイキング・オブ・ザ・ペニンシュラ東京』(文藝春秋)、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)や東京お台場に等身大ガンダムが出来上がるまでを撮影した『Real-G 1/1scale GUNDAM Photographs』(集英社)などがある。また『ハワイアン・レイメイキング しあわせの花飾り』『家庭で作るサルデーニャ料理』『他郷阿部家の暮らしとレシピ』など料理や暮らしに関する撮影書籍は多数。旅好き。猫好き。チョコレート好き。公益社団法人日本写真家協会会員。

Column

山口規子のMy Favorite Place 旅写真の楽しみ方

山口規子さんは、世界中を旅しながら、ジャンルを横断した素敵な写真を撮り続けるフォトグラファー。風景、人物、料理……、地球上のさまざまな場所でこれまで撮影してきた作品をサンプルとして使いながら、CREA WEB読者に旅写真のノウハウを分かりやすくお伝えします!

2015.11.25(水)
文・撮影=山口規子