クリームのあとにマスク!? ブースター!?

 順番を変える……これは“順番を守る”のと同じくらい重い意味を持っている。

 たとえばだけれど、ファンデーションを仕上げたすぐあと、いきなり“口紅を塗ってしまう”と、その意味がきっとわかるはず。普通に考えれば、眉やアイメイクから始めて最後に口紅、というメイク順になるが、それをひっくり返すだけで、じつはまったく異なる顔ができあがる。口紅が先だと自ずとアイメイクが薄くなるから。口紅だけで、すでにひとつの顔が完成するからなのだ。

 たぶん絵を描くのでも、料理をするのでも同じ。何から始めて何をあとにするかで、仕上がりがまったく変わってしまう。肌づくりでも同じ。常識とされてきたお手入れ順を一カ所ひっくり返すだけで、じつは思いがけない効き目が生まれたりする。

a マスクの泡が肌を密閉することで、マスクの高機能成分はもちろん、マスク前に使用したアイテムの成分までもがぎゅっと押し込まれるように肌に浸透。
B.A ザ マスク 60g ¥21000/ポーラ(10月14日発売)

b 肌細胞が夜に目覚めるという皮膚本来のリズムに着目。太古の植物・オセアニック クリスタの始原細胞を高濃度で配合した美容液が、寝ている間に肌を鎮静、再生、修復する。
プロディジー P.C. ナイトショット 20ml ¥18900/へレナ ルビンスタイン

 たとえば、“アルビオン方式”と呼ばれる“化粧水より乳液が先”は、キメがふっくらふくらんで、肌が明るくハリも出る。これも乳液がこわばった肌を柔らかくほぐして、水分の吸い込みのいい肌にするから。

 つまり“順番変え”による肌の変化には、いちいち理由があるのだ。お手入れの常識をくつがえすだけで、思いがけない手応えが生まれたりするのは、肌も手づくりするものと考えれば、納得がいくはず。定番通りのお手入れでは、どんな化粧品を使ってもとうてい生まれない効果が生まれたりするものなのだ。

 そこで知っておきたいのが、“クリームのあとのマスク”がもたらす驚くべき効果。これは今、快進撃を続けるポーラB.Aの“発見”で、クリームに続いて、泡状のマスクで肌を厚く包んだあと、その泡を取り去らずに手の平で押し込んでしまうのだ。

 クリームは“おふとん”にくるまれたように、温められて肌にぐいぐい浸透していき、マスクの泡をともに誘い込む。手の平をあてるだけですっと入っていって、それがそのままムチムチとした弾力に変わるのだ。

 それはまさに、今までには味わったことのない満足感。そもそもクリームのあとのワンアイテムは、ダメ押し的な濃厚さがある上に、それが泡だからまた新鮮。化粧前に行うと、化粧のりも仕上がりも全然違う。必ずクセになる。

 泡マスクも洗い流してしまうのをもったいないと思っていた人には無上の喜びだ。

 そしてクリームのあとのケアをもうひとつ。“フィニッシュブースター”という発想の仕上げ美容液だ。もともとブースターとは他のスキンケアの底上げ。従来はスキンケアの最初に肌の扉を開けて、潤いを誘い込むのがブースターの役割だったが、このヘレナのP.C.ナイトショットは、夜のお手入れの最後の最後に使う総仕上げ。その日のお手入れの力をすべて底上げするもの。

 クリームのあとの美容液なんて、物理的に成立するの?  と思うけれど、これがなんとも緻密で濃厚な仕上がりで、クセになる。すっきり仕上がるのに、やっぱり肌は厚みをもつ。ベルベットのような肌がその場でできあがるすごい発見と言っていいのだろう。

 これはやめられないはずである。

齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数

Column

齋藤 薫 “風の時代”の美容学

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2011.11.16(水)
text:Kaoru Saito
photographs:Yasuo Yoshizawa(still life)

CREA 2011年11月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

母になる!

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