『不良少女とよばれて』の原作者 原笙子のこと

 雅楽については以前説明しましたので簡単におさらいしますと、平安時代に大成された「世界最古のオーケストラ」といわれる「雅楽」という音楽のことで、それに舞を伴ったものを「舞楽」といいます。

 女性が雅楽を習うことが一般的になったのは意外なことにここ数十年のことです。雅楽は宮中の庇護のもと、主に楽家の男性が守り伝えてきた男性主体の芸能です。ですから男性装束を女性もユニフォームとして着ているのが昭和・平成の雅楽界です。現在も宮内庁の楽師は全員男性。女性が舞台に立つことのない伝統行事もあります。

 しかし、奈良、平安時代は女性も盛んに舞楽を舞い、楽器を奏でていました。実に千年の空白を経て、再び女性も雅楽を嗜む時代となったのです。

 女性舞人の先駆者となったのが原笙子(1933~2005)という人でした。

 ベストセラーになった『不良少女とよばれて』(筑摩書房)の著者でもあります。1984年にはTVドラマ化されこちらも大ヒットしましたが、決してドラマのようにチェーンを振りまわすような恐ろしい不良少女の話ではありません。宮内庁楽師に舞楽を習う為に家出をしたことなど、舞楽を根底に据えた原作でした。ドラマの内容があまりにも原作と違ったことで、格式を重んじる京都の雅楽界では風当たりも強く、「女だてらに舞楽を舞うなんて」と大変なご苦労をされたそうです。

 子供の頃にこのドラマを見て雅楽をはじめたという人に私は何人も出会いました。その存在を大衆に知らしめた功績はとても大きいと思います。

 私が門を叩いたのは、この原笙子が設立された『女人舞楽 原笙会(にょにんのぶがく はらしょうかい)』(兵庫県芦屋市)です。2011年の資生堂TSUBAKIのCM、2012年の大河ドラマ「平清盛」にて、十二単で五節の舞(ごせちのまい)を舞う姿をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

 他の雅楽団体と違うのは、現行の舞楽を伝承するだけではなく、千年前に絶えてしまった女性の舞楽を復活させている、日本で唯一の女性だけの団体であることです。一般的には楽器を習得してから舞楽を習うものですが、原笙会は舞楽のみ習うことができます。

2015.09.05(土)
文・撮影=中田文花