バブルに踊った80年代のトレンドを活写!
映画はバブルで盛り上がる1987年前後を背景に、静岡の奥手な大学生の鈴木と、合コンで知り合った歯科助手のマユのぎこちない恋模様を描く静岡編=Side Aと、上京した鈴木が才色兼備の同僚、美弥子と、マユの間で悩む姿が描かれる東京編=Side Bを、原作同様に70年代から80年代のヒット曲に乗せて描いていく。
イニシエーション=通過儀礼としての初恋を描いていたはずが、最後に突然ミステリーになるという、小説ならではのトリックを映画はどう見せるのか。難関だったと思われたが、堤監督は意外にも「苦労はないです。非常に楽しかった。原作の乾先生からアイデアをいただいたおかげで、とてもやりやすかったです」と語った。また、「カメラ目線の手法が大好きなんですが、今回ほどカメラ目線が活きた映画はないんじゃないかと思うくらい成功しました。前田さんの首をかしげる角度をご覧ください! 分度器で測りました!」と、アピールしていた。
また、映画の中で喫煙シーンのあった前田が「タバコに火をつけるのが難しくて、苦労しました」と語ると、堤監督が「裏で練習しているから、本当に吸ってるんじゃないかとみんなで言っていた(笑)」と突っ込み、「普段は吸いませんよ!」と前田は苦笑いしていた。
原作にも織り込まれたヒット曲が映画でも流れるが、特に印象的なのが森川由加里の「SHOW ME」。明石家さんま、大竹しのぶが主演した人気ドラマ「男女7人秋物語」(87年)の主題歌で、バブル期を象徴するヒット曲だ。ちなみに美弥子の両親を演じるのが、そのドラマに出演していた片岡鶴太郎と手塚理美。
さらに音楽のみならず、当時を知る人間にとっては、ブーツ型ジョッキやエアジョーダン(靴です)、スターレット(車です)、JOG(スクーターです)など懐かしいアイテムだらけなのが気恥ずかしくも楽しめるし、それらが秘密を解くヒントにもなっているので、注意深く観ることをおすすめ。バブル期を知らない人は、素直に騙されればそれでよし、というもの。
『イニシエーション・ラブ』
2004年に発表された同名の原作小説は、その10年後の2014年、テレビ番組などで著名タレントが紹介したことにより一躍注目を浴び、わずか1カ月で21万部を増刷することとなった。それを機に映画化のオファーが殺到。その結果、80年代カルチャーにも造詣の深い堤幸彦がメガホンを取り、本作が完成した。脚本を手がけるのは舞台を中心に活躍する新鋭・井上テテ。
(C)2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員会
URL http://www.ilovetakkun.com/
2015年5月23日(土)全国東宝系ロードショー
2015.05.20(水)
文=石津文子
撮影=山元茂樹