Magnificent View #567
メムノンの巨像(エジプト)
ルクソールのナイル川沿岸にある2体の像は、古代エジプト第18王朝の第9代の王、アメンホテプ3世が、紀元前14世紀に自らの姿をかたどって造らせたもの。もともと、像の後ろには彼のための葬祭殿があったが、後の王によって破壊され、現在は巨像だけが残されている。
それにしても、なぜ、アメンホテプ3世の像に、エチオピアの英雄メムノンの名がついているのか。それは、紀元前の不思議な現象に由来する。向かって右側の巨像が、朝方になると泣き声のような音を発していたため、「トロイ戦争でアキレウスに討たれたメムノンが、母に悲しみの挨拶をしているのだ」と考えられていたのだ。
珍しさのあまり、たくさんの人が見物に押し寄せ、当時のローマ皇帝まで見学に来るほど話題になったが、その後、ローマ時代の修復により泣き声は聞こえなくなったという。結局、奇妙な音は、地震によってできたヒビと、明け方の温度差や朝露の影響により、発せられていたものだとされている。
Column
今日の絶景
この広い地球上には、まだまだ知られざる素晴らしい景色がある。思わず息を飲んでしまう雄大な自然、ミステリーにあふれた驚きの奇観、そして、人間の文明が刻んだ偉大な足跡……。ここに、選りすぐりの絶景をお届けします。さあ、ヴァーチャルな世界旅行へと出かけよう!
2015.04.20(月)
文=芹澤和美