【KEY WORD:ホッケ高騰】

 『あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか』(生田與克著、角川学芸出版)というビックリするようなタイトルの本が出て、話題になっています。昔はホッケというと学生向けの安い居酒屋で出る焼き魚の代表で、わらじぐらい大きくてお腹がいっぱいになりました。しかし言われてみれば、最近見かけるホッケはずいぶん小さいですね。おまけに値段も高くなりました。

 そういえばここ数年はウナギも高騰して、お店で食べる蒲焼きが手の届かない値段になってきています。漁業の世界でいったい何が起きているのでしょうか。

 三重大学准教授の勝川俊雄さんなどの専門家がこれまでさんざん指摘してきていることですが、理由は非常にシンプル。漁師さんが乱獲しすぎているからなんですね。この結果ホッケやマグロ、サバといった魚は、じゅうぶんに大きくなるのを待つ前に獲られてしまい、小さなものばかりが市場に出まわってしまう。もちろん大きくなるのを待てばいい話なんですが、漁業者としては「自分が獲らなければ他の漁師に獲られてしまう」と考える。そういうジレンマで、結局は皆が待てずに小さいサイズのものを獲ってしまうというわけです。

漁業者ごとの漁獲枠が必要

 農水省は資源回復のため、漁獲量を削減するという計画を立てています。ただ問題なのは、農水省の決める漁獲枠は、全体の総量を決めているだけなんです。個別の漁業者の漁獲枠は決めていないので、そうなると当たり前のように「早い者勝ち」になりますよね。他の漁業者が獲りまくって漁獲枠がいっぱいになってしまったら、うちの獲り分がなくなる!というので、みな必死に小さい魚でもなんでも獲りまくる。その結果、ホッケはどんどん小さくなっていくわけです。

 これはウナギも同じです。ウナギは養殖ですが、養殖のもとになる稚魚のシラスウナギは野生のものを獲るのです。これも漁業者がみんなで獲りまくったため、1970年ごろとくらべるとシラスウナギの漁獲量は20分の1ぐらいになってしまいました。この結果、ウナギは国際自然保護連合の絶滅危惧種(レッドリスト)に指定されてしまったのです。

 ノルウェーなどの漁業先進国では、漁業者に個別の漁獲枠を決めています。そうすれば「早い者勝ち」になりませんから、じゅうぶんに大きくなった魚を安心して獲ることができる。価格も高くなるので儲けも増え、漁師さんたちの生活も安定し、産業としても成長していきます。日本もこのような政策に移行してほしいものだと思います。

佐々木俊尚(ささき としなお)
1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。公式サイトでメールマガジン配信中。著書に『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『自分でつくるセーフティネット』(大和書房)など。
公式サイト http://www.pressa.jp/

Column

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2015.03.06(金)
文=佐々木俊尚