この宿からの旅 その2
「瀟洒な洋館から奈良美智まで、弘前のハイカラを知る」

明治39年に建てられた旧弘前市立図書館。こんな素敵な図書館で学べていたのがうらやましい。

 弘前市は津軽藩の城下町として栄えたところ。明治時代から学都を目指して、教育に力を入れるため外国人教師を招いており、教師館、図書館、教会などの洋館が今も残る。その“ハイカラ”ぶりは、当時の地方の進取の気性とロマンが感じられる。

 八角のドームが洒落た「旧弘前市立図書館」の設計・施工を行ったのは、弘前の棟梁である堀江佐吉、資金は鉄道事業などで成功した齊藤主らが提供した。昭和6年まで「市立図書館」として利用された後に民間にいったん払い下げとなり、平成2年の市制施行100周年の記念施設として現在の場所に移築・復元されたという。当時の机や椅子などの家具も入っており、身近で見られる大らかな展示も弘前らしい。

旧東奥義塾外人教師館は、当時の外国人の生活がうかがえる。カフェは洋館らしくロマンチック。

 また、明治5年に青森で初めて開校した東奥義塾に招かれた外国人教師の住宅「旧東奥義塾外人教師館」は、当時の地方での外国人の生活がうかがえて興味深い。1階にはカフェを併設していて、青森のりんごを使ったパイなどのスイーツもある。

弘前市出身のアーティスト奈良美智が、この地で開催した展示会の記念として残る巨大なオブジェ“A to Z Memorial Dog”。

 一方で、弘前の誇る現代美術の雄である奈良美智の作品が吉野町緑地公園内に大きく立っている。弘前では、洋館と現代アートというそれぞれの時代の先端を街の中で見ることができるのだ。

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2014.09.14(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹