推薦人:江里康慧さん(平安佛所)
「老松」の夏柑糖
仏師と言えばまず頭に浮かぶのが、歴史の教科書に載っている「運慶・快慶」でしょう。鎌倉時代初期に東大寺南大門の阿吽の力士像を作ったことで有名ですが、仏師の歴史はもっと古く、623年に製造された法隆寺金堂の釈迦三尊像の光背銘に「司馬鞍首(しばのくらつくりのおびと)止利仏師」と記載があり、記録上で最古の仏師とされており、実に飛鳥時代という古い時代です。奈良時代では、国家プロジェクトによって国分寺が全国に建てられたので、仏師は大忙しで、立場も国家公務員でした。平安時代では、寺院や貴族のお抱えのいわゆる「京仏師」は全盛を迎えますが、鎌倉時代に入ると、「奈良仏師」が運慶たちにより隆盛を極めます。南北朝以降は仏教の多様化により、仏師は減っていきます。単純に仏教が、衰えていったのです。
それでも現在まで、脈々と仏師の系譜は続いており、今回ご紹介する江里康慧(えりこうけい)さんもその一人です。平安神宮の東方に工房「平安佛所」を構え、康慧氏が彫刻した仏像に、その妻である重要無形文化財保持者(いわゆる人間国宝)の截金師、故江里佐代子氏が截金を施す技法で、仏像制作をしてこられました。現在は娘の左座朋子さんが、截金を継承されています。江里さん制作の仏像は全国にありますが、一例を紹介すると、三千院の金色不動堂の金色不動明王と宸殿の薬師瑠璃光如来の御前立です。御本尊は秘仏なので見ることができませんが、御前立はどちらもそっくりに作られているそうです。
さて、江里さんご推薦のお土産は、京都五花街の一つである上七軒の中に店を構える、有職菓子御調進所「老松」の夏柑糖です。もともと上七軒のお茶屋さんのお客様用に作られたものです。和歌山や萩で委託栽培された、今や貴重になった夏みかんの「皮を傷つけないように中の実を指で丁寧に取り出し、果汁をやさしく絞り、それを寒天に加え、器の皮に流し込む」といった工程をすべて手作業で行います。酸味と皮からの渋みが合わさり、独特の風味が味わえます。毎年4月1日に製造を開始。その年の夏みかんの取れ高により、終了時期はまちまちになります。2014年は7月いっぱいで販売を終了したそうなので、来年以降にぜひ。
老松
所在地 京都市上京区北野上七軒
電話番号 075-463-3050
FAX 075-463-3051
営業時間 8:30~18:00
定休日 不定休
URL http://www.oimatu.co.jp/
小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。
2014.08.31(日)
文・撮影=小林禎弘