本に導かれて旅をするのはすてきな体験です。京都を舞台にした直木賞受賞作品『八月の御所グラウンド』が文庫化された万城目学さんに、学生時代を過ごした京都の思い出深いスポットをお聞きしました。

 文庫を片手にそれらの場所を巡ってみれば、京都と小説作品の魅力がともに倍増しそうです。


喫茶店(「イノダコーヒ」「小川珈琲」)

 いまは東京に住んでいるので、かつて住んでいた京都へは、仕事で行くことが多くなりました。前日ホテルに泊まって、お昼あたりからの仕事の前に、朝昼兼用で食べられる場所を求めてよく歩き回ります。そんなときに行き着くのは、居心地のいい喫茶店です。

 京都でお気に入りの喫茶店といえば、まずは定番の「イノダコーヒ」。三条店と本店が間近な場所にあるので、混み具合を見てどちらかに入ることにします。

 過ごし方としては、店内に置いてあるスポーツ新聞を手にとり広げながら、ゆったりとコーヒーカップを傾け、軽食を頬張る。中年男性が居心地のよさを感じるかどうかは、スポーツ新聞の類が店内に置いてあるかどうかで決まります。常連客ともなると、席につくなり店員がお好みの新聞を持ってきてくれるそうです。そこまでくると、まさにその喫茶店が「自分の居場所」となるでしょう。自分自身はまだまだそのポジションには行き着いていませんが。

 そして、2022年にできた「小川珈琲」堺町錦店。こちらにスポーツ新聞はないものの、店の中に石庭があって落ち着ける雰囲気です。コーヒーが美味なのはもちろんですが、京都産小麦を使った食パンで作るサンドイッチがおいしいので必ず注文します。

 東京ではテナント貸ししているビルの一角に収まっている喫茶店が多いものですが、京都では独立した一軒家の店が多く、そのほうが店内は広々としたつくりになって居心地がいいですね。

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