ともに手を動かす食の体験が旅をより豊かなものに

 しらかば荘の滞在を語る上で、欠かすことができないのは、食の体験です。プロユースの設備を備えたキッチンは、料理をすること自体が一つの楽しみになるよう設計されています。4口ガスコンロ、鉄製フライパン、三段せいろ、炊飯窯……茂田氏が厳選したプロの厨房に引けを取らない道具たちが、ここでは滞在者の手に委ねられています。

 この日の夕食は、レタス農家を営むしらかば荘のスタッフが朝採ってきてくれた新鮮なサニーレタスと立派なサイズのマッシュルームを使ったサラダ、バラとロースの豚しゃぶ鍋、地元の川魚専門店のうなぎを使った炊き込みご飯です。

 スタッフの方に教えていただいた要領で羽釜でお米を炊きながら、サラダを準備していきます。「レタスはどのぐらいのサイズにちぎりますか? 1/3ぐらい?」「お米、沸騰して10分たちました」「味見してもらっていいですか?」とキッチンには自然と会話が生まれます。そして、美味しいものをつくるという共通の目的に向かううち、そこには静かな連帯感が生まれていました。共に手を動かすことで深まる人とのつながりは、この宿からの特別なギフトのようです。

 また、羽釜から聞こえてくる音に耳を澄ませたり、立ち上る湯気をとらえたり……慣れないキッチンで慣れない道具を使い、普段使わない感覚を呼び起こしながら調理することが、食の体験をより豊かなものへと変えてくれました。

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