スマートフォン一つで何でも解決できる時代に、あえて「手間をかける」ことを選んだ宿が、群馬県みなかみ町に誕生しました。2026年4月10日にオープンした一棟貸しの宿「しらかば荘」。OSAJIの茂田正和氏とADXの安齋好太郎氏、突出した感性を持つ二人が生み出したこの場所を訪れてみました。


建物の記憶を残し、新たな価値を纏う宿

 東京駅から上越新幹線で約60分。上毛高原駅に着くと、改札でしらかば荘のスタッフが出迎えてくれました。宿まで車で約30分、ジープに乗せてもらい向かいます。

 天気は小雨。宿に到着すると、可愛らしくうつむいたひまわりたちが目に入り、早々に心が和みます。濡れて一層青々と輝く芝生、悠々と横たわる巨大な流木を愛でながら、エントランスエリアへ。大きなガラス壁の一部が木の引き戸になっていて、そこから中に入るのですが、段差もないので「入る」というよりは、「移動する」ような感覚です。

 引き戸を開けた瞬間、まず目を奪われるのは、土間に堂々と置かれた、石をくり抜いて作ったという大きなキッチンカウンター。その手前には、樹齢150年のクスノキから切り出された一枚板のダイニングテーブルが鎮座しています。大きな石に大きな木、まるで建物が立つずっと前からそこにあったかのような、圧倒的な存在感を放ちます。

 こちらの建物は、もともとは昭和38年に建てられたある中学校が所有していた学習講堂を改築したもの。その大きな外箱の中に、茶の間と和室2部屋、そして浴室2つとトイレ2つが独立した“小さな箱”のような形で散りばめられています。そして、各部屋は迷路のようにはりめぐらされた廊下で行き来できるようになっています。

 部屋の前やトイレの前などにある、光があまり届かない暗がりの空間からは、建物に積み重なった記憶がにじみ、どこか懐かしく、包み込まれるような安心感が建物全体を覆います。

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