モンゴルの衣装では「帽子」と「ベルト」が重要

――歴史劇を映像化するにあたって、歴史ファンや専門的な視点を持つ視聴者の存在も意識されると思います。資料集めや時代考証など、下準備の段階でのご苦労や工夫された点はいかがでしたか。

 今回は、本当に心強い時代考証の先生方がしっかりと監修に入ってくださっていたことが最大の支えでした。そして何より、原作者であるトマトスープ先生のリサーチ力と、知識に対する凄まじい貪欲さによって、原作の段階で土台が驚くほど強固に作られていたんです。ですから、「大変だな、苦しいな」と頭を抱えるよりは、「次はどんなことを知ることができるんだろう」という純粋な興味と好奇心が常に勝っていました。専門知識を持った先生方が後ろに控えてくださっている安心感があったので、疑問に思ったことは何でも無邪気に質問させていただくことができました。

――13世紀という時代を描く上で、具体的に難しさを感じたのはどのような部分でしたか?

 13世紀というのは、現代に直接残っている物的な資料が本当に少ない時代なんです。『平家物語』のときもそうでしたが、現存する絵巻物やわずかな文献の記述から、「当時の人々はどんな服を着て、どんな道具を使い、どんな風土の中で生きていたのか」を推理し、想像していく作業になります。でも、その推理していくプロセス自体が自分たちの想像力をものすごく鍛えてくれる感じがして、とても楽しかったですね。

――当時の衣装や建築、色彩、音楽といった世界観を再現するにあたり、実際にモンゴルへ現地取材にも行かれたそうですね。

 現地の歴史博物館などで当時の貴重な資料や展示を拝見したのですが、衣装ひとつ取っても「これは13世紀当時のもの」「これは14世紀以降、中国(元代)の影響を受け始めてからのもの」といった細かな差異があるんです。基本的には可能な限り時代に即したものを忠実に描くことが大前提ですが、アニメーションとしての画面作りやキャラクターの個性を際立たせるための「創作」を織り交ぜることもあります。史実に忠実であることの誠実さと、アニメーションとしての創造性のバランスについては、スタッフみんなで何度も話し合い、時には迷子になりそうになりながら手探りで進めていきました。

――モンゴルでの滞在中、特に印象に残っている現地の体験はありますか?

 現地の方のお宅にお邪魔した際、伝統的なお洋服を着せていただいたことがすごく印象に残っています。気がついたらスタッフ全員がモコモコした現地の服を着せられていて(笑)。でも、実際に着てみるとものすごく暖かくて、過酷な自然環境の中で暮らすための工夫が凝縮された、本当に理にかなった衣服なんだということが肌で理解できました。現地の方々から「とにかく帽子とベルトが大切なんだ」と教えていただいたのも面白かったです。生地が風を一切通さない作りになっていて、極寒の季節だったにもかかわらず、その一着を着ているだけでたくさん重ね着をしなくても十分に暖かく過ごせるんです。13世紀当時のものとは細部の変化はあるにせよ、厳しい風土を生き抜くための生活の知恵の大枠は、今も脈々と受け継がれているんだなと実感して深く感動しました。

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