【相談】社畜な考え方から脱したい
【お悩み】
10年ほど同じ派遣先にいます。定時で帰るために効率重視で仕事をしてきたところ、「仕事が早い」と評価され、難易度の高いものばかり渡されるようになってしまいました。就職氷河期世代の考え方の癖なのか、無理をしてでも期限内に終わらせようとしてしまうのですが、本当はもうガツガツ仕事をしたくありません。この社畜もどきな考え方から脱する方法はありますか?(50歳・女性・名無し)
スー 「就職氷河期世代の考え方の癖」なんて言っていますが、それは社畜もどきでもなんでもなくて、単に仕事の処理能力が高いってことですよ! 定時で帰るために効率重視で仕事をしたいと思っても、なかなかできない人も多いんです。世の中の仕組みや上司を一切信用せず、いかに手を抜いて楽に働くかしか考えていない人もたくさんいる中で、そっち側の人間にならなくて本当に良かった。そっちに行ってたら50歳で確実に詰んでましたからね。「定時で帰るために効率的に仕事ができる」というご自身の能力を、もっとポジティブに認めてあげて!
堀井 会社ってどうしても、できる人にどんどん仕事が集中しちゃうからね。
スー そうなんだよね。だからこそ、能力があって50歳で難しい仕事を定時で上げられるんだったら、思い切って正社員での転職にチャレンジしてみるのも手だと思うな。もちろん、50歳で派遣からいきなり正社員になるのは相当難しいことだとは私も思います。年齢の壁も確実にあるしね。でも、「もうガツガツしたくない」って書いてあるけど、それはガツガツしてるんじゃなくて単に能力がありすぎるだけなんじゃないかな。もう今後、私たちはいくつまで働くことになるか、わからないのよ。60歳定年は絶対ありえないし、下手したら75歳まで働かなきゃいけないってなったときに、年齢で完全に足を切られたりすることがないうちに、今ある能力をどう活かして長く働くかにシフトした方がよっぽど健康的だと思うな。
堀井 派遣でなかなか時間内に終わらなくて契約を更新してもらえないという人だと大変だけど、相談者さんはそうではないからね。仕事が早いと評価されて難易度の高い仕事が全部自分に集中しているのに、もしそれが給与に反映されない、昇進もしない、保証もされないなら、正社員の道の他にも対価の交渉をしてもいいのでは。「君は優秀だね」という評価の言葉だけで、「都合のいい派遣社員」として便利に使われてしまわないようにしてほしいです。私も会社員時代、「はい、いいですよ」って引き受けていたら全部の仕事が集中してしまったタイプだったのでよくわかりますが、ガツガツやってしまうという性分自体はなかなか変えられないから(笑)。
スー そうそう。もしどうしても「ガツガツ仕事をしたくない」んだとしたら、今の派遣先でもう「やらない」を選ぶしかないよね。でも、そうしたら多分職場での居心地も悪くなるし、10年も同じところにいて「急にできなくなったね」って見られると思う。サボっていると思われたり能力が下がったと思われたりして、どちらにせよ居場所がなくなってしまうから、本当に嫌なら派遣先は変えた方がいいと思います。
堀井 50歳になるとやっぱり健康の不安もあるし、自分の実力として「これができるんだ」というものをちゃんと担保しておきたい時期でもあると思うの。20代、30代だったら「行け行け!」って感じだけど、今はそうじゃない。どんなに頑張って働いたとしても、いつか思わぬことがあったりする年齢でもある。こんなにできる人だったら、頑張った分それが「お給料」や「安定した雇用」に反映される場所へ移ることもぜひ考えてみてほしいです。
スー 今は時代が変わっていて、「定時で帰ることが最優先なので効率的に働いてください」という会社も絶対にあるから。残業していると怒られる会社だって増えてきたし、ガツガツ働かさせられるのではと恐れなくても大丈夫。時給ではなく、能力や成果で評価されて給与が発生するところへ自分を移動させるか、あるいは派遣先を変えるか。「効率よく仕事を回せる」という優れた能力を活かすことを、ぜひ考えてみてほしいな。
ジェーン・スー
1973年東京都生まれ。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、Podcast番組「となりの雑談」のパーソナリティーとしても活躍。近著に『介護未満の父に起きたこと』(新潮新書)、『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』(光文社)など。
堀井美香(ほりい・みか)
1972年秋田県生まれ。2022年3月にTBSを退社しフリーランスに。様々な番組・CMでナレーションを担当する一方、自ら朗読会を主催するなど、多方面で活躍する。著書に『一旦、退社。50歳からの独立日記』(大和書房)など。
Podcast「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」
毎週金曜日の夕方5時に配信。TBSラジオが制作するPodcast番組。飾らないトークで女性たちの支持を集め、月間リスナー約80万人の人気番組に。2026年8月には「緑のオーバーザサン 安全第一 私たちの大運動会2026」を開催。成功裏に終えた。
続きは「CREA」2026年秋号でお読みいただけます。
文=綿貫大介 写真=平松市聖 コラージュ=Nao/petitoto スタイリング=宮崎真純(likkle more) ヘアメイク=yumi(ThreePEACE)
CREA 2026年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
