ベルギーとマレーシアで生まれたパンダもいる
綿陽基地の醍醐味の1つは、中国国外にいた多くのパンダを観覧できること。オスの華豹(ファーバオ)とメスの金宝宝(ジンバオバオ)もそうだ。筆者は2018年8月、フィンランドでこの2頭を観覧した。2頭は2024年11月に中国へ戻り、2025年11月に綿陽基地へ移った。2頭は綿陽基地でも一緒のパンダ館にいる。フィンランドと中国で、同じような状況で観覧できて感慨深かった。
パンダは単独で生きる動物なので、飼育下のパンダも繁殖期などを除き、普段は屋内の個室や、屋外の隔離された場所で生活している。一方で、パンダは嗅覚が鋭く、においでコミュニケーションをとる。そのため、壁で隔てられていても、隣室にいるパンダのことは分かる場合がある。筆者が見ている間、華豹は、金宝宝がいるほうをしきりに気にしていたが、金宝宝は無関心のようだった。
マレーシアで観覧したオスの福娃(フーワー)とメスの鳳儀(フォンイー)にも綿陽基地で再会した。この2頭も2025年5月に中国へ戻り、綿陽基地で一緒のパンダ館にいる。
福娃と鳳儀の間には、3頭のメスがマレーシアで誕生した。現在は3頭とも中国に来ており、次女の誼誼(イーイー)は綿陽基地にいる。筆者が誼誼を見たのは、2023年8月にマレーシアの動物園から中国へ向けて出発する姿を見送って以来だ(参照:パンダの繁殖において実績を誇る【マレーシアのパンダ事情】旅立ったパンダ3姉妹の現在も紹介)。
誼誼は、ベルギー生まれのオスの天宝(ティエンバオ)と一緒のパンダ館で暮らしている。筆者は、天宝とは初対面。2016年6月にベルギーで父親の星徽(シンフイ)を観覧したが、天宝は生後1週間なので、まだ公開されていなかった。
このほか綿陽基地では、華豹の母の茜茜(シーシー)と姉の美茜(メイシー)、成都ジャイアントパンダ繫育研究基地で生まれたオスの娅祥(ヤーシャン)なども暮らしている。パンダを好きな人や専門家らの間で「レジェンド」と呼ばれるメスの草草(ツァオツァオ)もいる。
草草は、2002年に野生下で生まれ、幼少期に母親とはぐれ、四川省汶川県草坡郷に取り残された。幸い地元の人に発見され、パンダセンターによって保護された。
成長した草草は、2つの大きな功績を残した。1つは「母親が子どもを育てる」方法での野生復帰訓練のパイオニアとなったこと。人が深く関わる従来の方法では、野生の環境に適応できず、命を落としたパンダもいた。草草は、子どもの淘淘(タオタオ)と華姣(ファージャオ)に対し、早いうちから木登りの方法を教えるなど、野生の環境に適応できるよう導いた。その結果、この2頭は野生復帰を果たした。
もう1つは、野生のオスと自然交配して、出産したこと。2組の双子が無事に育ち、和和(フーフー)と美美(メイメイ)は、飼育下のパンダと野生のパンダの交配で誕生した世界初の双子パンダとして、ギネス世界記録に認定された。
劇的な生涯を送り、子どもの野生復帰や、野生のパンダとの交配による遺伝的多様性の確保などを通じて、パンダの保全に大きく貢献した草草。現在は綿陽基地で穏やかに暮らしている。
