高校生の頃の自分が会いたかった大人になりたい

――かっこいい(笑)。最初から、今のような発信をされていたんですか?

 最初は、プラスサイズを強みにして活動しようと思っていました。プロフィールにも「プラスサイズのパーソナルスタイリスト」と書いていたので、「体型に悩んでいる方が来てくださるんだろうな」と思っていたんです。

 ところが蓋を開けてみたら、プラスサイズの方だけではありませんでした。私のもとに来る人に共通していたのは、皆さん何かしらのコンプレックスを抱えていたこと。

 「百合子さんを見ていると元気になれる」「百合子さんのファッションも好きだけど、どうしたらそんな服を着てもいいと自分に“許可”を出せるんですか?」「私もノースリーブを着られるようになりたい」そんな声をたくさんいただくようになって気づきました。私自身がプラスサイズであることには意味がある。でも、見られているのは体型そのものではなく、「自分のコンプレックスと付き合いながら、おしゃれを楽しむ姿勢」だったんだと。

 そこで動画コンサルをお願いして、発信の方向性を変えることにました。ファッションのことは自信があるけれど、SNSでどう見せるかは専門家に学んだほうがいいと思ったからです。

 それまでは、「今日のコーデ」写真とともに、本当に伝えたいことをキャプションに書いていたんですが、なかなかフォロワー数が増えない。「いいことを書いているのに、どうしてバズらないんだろう」と思っていたんですよ(笑)。

 コンサルタントのアドバイスは、「ファッションを見せなくてもいい。百合子さんはカメラに向かって話したほうが伝わる」。最初は「それじゃファッションじゃなくなっちゃう」と思いましたし、「英語も話せるなら発信してみたら」と言われても、「ネイティブじゃないのに恥ずかしい」と抵抗がありました。

 それでも、自分なりに試行錯誤する中で、たどり着いたのが車の中から語りかけるスタイルです。その夏に投稿した「ノースリーブは飼いならす」がスマッシュヒットして、再生回数は100万回近くまで伸びました。その動画をきっかけに、フォロワーも一気に増えました。

――初めから、「いつか本にまとめたい」と考えていたんですか?

 パーソナルスタイリストの養成講座で「10年計画」を立てる課題がありました。1年後、3年後、5年後、10年後に何をしたいか、売り上げはいくらにしたいかを書くのですが、私は5年後の目標に「本を出す」と書いていました。日々発信していることを、一冊にまとめたいという思いがあったんです。

 原点には、高校生の頃の経験があります。当時は今よりずっと痩せていましたが、生まれつき骨格がしっかりしている私は、どれだけ痩せてもLサイズ止まり。当時はEGOISTやLOVE BOATなどのギャルブランドが大人気で、XSやSサイズが当たり前の時代でした。今のように大きいサイズの展開もなく、「一度でいいからMサイズを着てみたい」と執着していました。一時期は"明るい摂食障害"だったんです。マックを食べた後で、水をたくさん飲んで吐いたり……苦しんでいました。

 だから、この仕事を始めてからずっと一つのモットーがあります。それは「あの頃の自分が会いたかった大人になる」こと。もしあの頃の私の身近に、プラスサイズでもイケイケで素敵に生きている大人がいたら、あんなふうに自分を追い詰めることはなかったと思います。あの頃の苦しかった自分を、救ってあげたい。その思いは、ずっと変わりません。

» 後篇を読む:「ノースリーブはね、飼いならすの」発言で一躍注目を集めたパーソナルスタイリストに学ぶ、“センスが磨かれない人”特有の思考グセ

安井百合子(やすい・ゆりこ)

東京都出身。パーソナルスタイリスト・ファッションコンサルタント。「隠すを魅せるに変える」をモットーに、コンプレックスの取り扱い、チャームポイントを表現するメソッドやノウハウをファッション・ヘアメイク・マインドのトータルでコンサルティングするスタイリストとして活動。SNSではファッションコンサルティングの枠を超えたメッセージが共感を呼び、22万人以上のフォロワーから支持を得ている。

コンプレックスを飼いならして「好き」を着こなす センスのトリセツ

定価 1,760円(税込)
高橋書店
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

次の記事に続く 「ノースリーブはね、飼いならすの」発言で一躍注目を集め...