死の危険もある腸閉塞を防ぐために

 中国での研修では、食事管理に関する知見も得た。パンダセンターでは、主食の竹を必要なだけ与えつつも、ある程度制限し、パンダ団子やニンジンなどの副食で調整しているという。これは、竹の幹が腸に詰まって起こる腸閉塞を予防するためだ。腸閉塞は致死率が高く、2026年2月にも中国・杭州の動物園でパンダが命を落としている。

 上野動物園は、これまで竹を潤沢に与えてきたが、入手できる竹の種類が限られるという制約もあった。高岡さんらは帰国後、中国の方法を参考に竹以外の副食を増やすことにした。与えるニンジンの量は以前の5倍ほどに増やし、腸の潤滑を良くするための油なども与える新たな取り組みを始めた。

 「パンダたちが中国に帰った時、中国の環境で抵抗なく暮らせることが大切です。そのために、中国のやり方、環境やアドバイスをもっと取り入れて、パンダたちに負荷がかからずに暮らしていける形を目指していく必要があるのかな、ということを今回の研修で学びました」と高岡さんは語る。

 日本で初めてパンダを飼育し、繁殖にも成功した上野動物園だが、双子の飼育はシャオシャオとレイレイが初めてだった。パンダの生態は未解明な部分もあり、飼育技術が進む中国でさえ飼育方針を変えることがある。そうした中で同園はさまざまな課題と向き合い、改善を重ねてきた。

 パンダの飼育を担当していた石神雄大さんは、「取り組みの一つ一つが私たちにとっては非常に貴重な経験で、上野動物園の飼育技術を大きく向上させることにつながりました。この経験を記録して、さらに改善し続け、次の世代にしっかりと引き継ぐことが大切です。その積み重ねが、ジャイアントパンダの保全にもつながると私は考えています」と述べた。

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【詳しく読む】「中国に帰ってくるパンダは…」上野動物園がこれまでの飼育を通して得た“知識”と“新たな試み”〈音を聞かせて刺激に慣らすことも〉
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中川 美帆(なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(17カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

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