一卵性親子みたいなところがあるから
響子 女を振りまくっていう感じではないけど、母なりにウキウキしてました。Aさんの名字の一文字にちゃんをつけて呼んで、「○○ちゃん、こんな別荘持ってるんだよ」なんて、言葉の端々に晴れやかさがあった。私も楽しみだったなぁ。うちに来る度に1万円のお小遣いをくれたんだよ。
桃子 買収されてたんだね。それにしても、娘に隠さないって不思議に思う人もいるよね。
響子 そう言われれば、確かに。
桃子 恋愛していることを隠すのって、男性と女性で違うと思うんです。男性が隠すのは、不倫とかのバレたらまずい時。
響子 社会的な問題というかね。
桃子 そうそう。だけど女性はそれと関係なく、なんか気恥ずかしいみたいなことで隠す。でも祖母は、そういう女性性がない人だと思うんです。かといって男性的なやましさもない。「(妻子がいても)好きなんだからしょうがない」というような感覚で、隠す必要はないと思ってたんじゃないかな。
響子 本人にそういう理屈はなくて、ウキウキした感じでズンズン進んでいったと思います。感情の赴くままに生きる人だから。
桃子 家に連れてきてたのには、祖母のアイデンティティーの中に響子が入り込んでいるという面もあったと思います。一卵性親子みたいなところがあるから、その意味でも気恥ずかしさはなかった。
響子 とにかく何でも自分の好きなようにする人ですから。今、施設に入って寂しがっているのも、好きにしたいのにできないからだと思うんです。恋愛でも何でも、私は好きにしたいんだよって。
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ぼけていく私
定価 1,430円(税込)
文藝春秋
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