トイレに出かけたDさんの頭によぎった“記憶”
もう限界かも……そう感じたDさんは先輩の問いを逆手に取り、こう返しました。
「あ、あの! 指摘というか、私トイレに行ってきてもいいですか?」
「トイレかよ~!」
かすかに緩んだ場の空気。
Dさんはペコペコと頭を下げつつ、足早にロッジ外のトイレに向かいました。
自分の要領の良さに自分で感心しつつ用を済ませたDさん。手洗い場で鏡を見ていたとき、ふいにあの写真アルバムが頭をよぎりました。
「あ…………いや、絶対そうじゃん……」
ごっそり抜けていた去年のアルバム。その中心に“まことくん”がいたのではという疑念が、Dさんの中で閃きました。
一体、先輩たちは何を思ってこんな場所で私たちに何も告げずに合宿を平然とやっているのだろう……考えるだに答えが出なくなるその疑問に困惑していると、トイレの外の木陰から物音が聞こえたのです。
ガサッ……ガサガサッ……。
「ひっ!」
藪をかき分けるように遠のいていくその足音は、1人ではないようでした。
「…………うっ!!」
唐突にこみ上げる吐き気と、脳裏に閃光のように蘇る田んぼの光景。
男の肩に手を置いたまま、ゆらゆらと音もなくついていく女の陽炎のような後ろ姿。
「うげっ……」
手洗い場の流しに嘔吐してしまったDさんは、トイレから飛び出すと全力でコテージに走りました。
