神秘の島で、地域との豊かな関係を築いていく

――淡路島の中で、感覚を呼び覚ましてくれるような場所はありますか。

和泉:淡路島の南西部、徳島寄りの方面はいいなと思います。国有地の公園があるなど、きっと何億年も前から変わってないのではと思わせるほどのプリミティブな風景が広がっています。

 例えば沼島(ぬしま)。淡路島は神話で日本で最初に生まれた島とされていますが、その中でも最初にできた土地。この島には「上立神岩」という海からそそり立つシンボル的存在の岩があり、その周辺だけ不思議なバイブスが感じられます。島へ向かう道中は、どこか異界へ入っていくような静けさがあって、到着した瞬間に視界がパッと開ける。そのコントラストも含めて、とても印象的な場所でした。訪問には1日を潰す覚悟が必要で、船の人数制限により頻繁には行けませんが島自体は1日で回れるほどの小ささです。

 春におすすめしたい美しい場所だと、成ヶ島ですね。洲本から渡し船で行ける国立公園です。無人島で、淡路に最初から自生していた植物だけが綺麗に残されています。有名な花ですと、萩のような見た目のハマボウフウ、僕が淡路で自生する植物でいちばん好きなハマゴウがあります。ハマゴウは「浜に香る」と表記されるように、海浜植物で砂浜に生えています。シソ科の植物で肉厚な葉を持ち、ユーカリとセージの間のような素晴らしい香り。ローズマリーのように紫の小さな花がたくさん咲く様子は本当に素敵なんです。派手な絶景や壮大な自然とは言えませんが、自生する植物に触れ合えるスポットであり訪れると何だか穏やかな気持ちにさせてくれる島ですよ。

――10年間淡路島で暮らす中で、どんな変化や可能性を感じていますか

和泉:この街は、かつて船の交易で栄えた港町でした。本州とをつなぐ橋が開通し、流通が自動車に依存するようになり衰退の一途を辿りましたが、それが故に開発されずに古い町並みを今に残しています。ビジネスチャンスになりえなかったからこそ、このような歴史的な景観が自然に保存されているのです。

 そして今、淡路島は急速に変わってきています。僕が移住してきた当時は東京からやってくる人はほとんどいませんでしたが、コロナ禍を経て、神戸や大阪にアクセスがいいこともあり現在は人口が大幅に増えています。でも、以前のような昔の面影を感じさせる淡路島こそが本当の魅力だし僕はすごく好きだなぁと。発展がもたらすものもあれば、発展によって失われるものもある。嗅覚もそのひとつかもしれません。

 10年暮らして、ここで根を張ると決めた以上は地域や身の回りが良くなっていくことを催していきたい。昨年11月に「SCEN」をオープンして、たくさんの友人や仲間が訪れ「実際に来てみたらすごく良いところだね」と口々に言ってくれています。この土地の魅力に気づいて、周辺で物件を借りたい、お店をオープンしたいなどと声をかけてくれる人もいます。実現にはまだまだハードルもありますが、僕らの取り組みに共感してくれ、町の活性化につながっていく。きっかけになってくれればこんなに嬉しいことはないですよね。


 淡路島が持つ根源的な魅力を捉え、時間をかけて形にしていく。それは和泉が取り組む「香りの抽出」にも似ている。“香りの島”のエッセンスに満ちた「SCEN」。心を整える旅にふさわしい場所だ。

SCEN

住所:兵庫県淡路市志筑3371
営業時間:Store 毎週土曜-日曜 13:00-18:00、Bar 毎週金曜-土曜 17:00-23:00
https://www.instagram.com/scen.jp/

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