ミュージシャンとしてのみならず、幅広いジャンルで活躍してきた近田春夫さんが、半世紀を超えるそのキャリアにおいて親交を重ね、交遊してきた錚々たる女性たちとトークを繰り広げる対談シリーズ「おんな友達との会話」。

 4人目のゲストは、イラストレーターのこぐれひでこさん。実は、近田さんとは半世紀を超える親交を続ける仲である。対談を行った場所は、相模湾を見下ろす景勝地、横須賀は秋谷にあるこぐれさんのご自宅。夫君の売れっ子フォトグラファー・小暮徹さんも交えた対話の様子をここにお届け。


母の実家には“猿小屋”が。変わり者の伯父とベンツでの往診

近田 いやあ、この家、すごく眺めがいい自然豊かなロケーションにあるねえ! 余計なお世話だけど、野生の熊とか鹿とか猿とか、現れたりしないの?

こぐれ さすがに会ったことないわよ。

近田 それは安心しました(笑)。

こぐれ そういや、私の母の実家は、猿を飼ってたのよ。猿小屋があった。

近田 犬小屋はよく聞くけど、猿小屋って生まれて初めて耳にしたよ。しかし、何でまた猿なんて飼ってたわけ?

こぐれ 子どもの頃、一緒に住んでた伯父が、猿を飼いたかったらしく、どこかで買ってきたのよ。ニホンザルは小屋に入ってたけど、ポケットモンキーみたいなのは、家の中で放し飼いにしてた。

近田 今じゃ、条約とか法律とかが厳しくて、簡単には飼えそうもないけどね。そもそも、ひでちゃんのご出身って、どちらなんでしたっけ?

こぐれ 埼玉県の熊谷。猿のいた母の実家は隣の深谷にあったから、よく行き来してたのよ。母方のおじいさんは、その自宅で歯医者をやってた。

近田 お母さんは何人きょうだいだったの?

こぐれ 伯父とふたり。伯父は、東北大の医学部を出て、その大学病院に勤めてたんだけど、私が小学校に入った頃、実家に帰ってきてクリニックを開業したの。

近田 しかし、猿を飼い始めるって、なかなか変わってるよね。

こぐれ そうそう、変わり者だったのよ。新し物好きでさ、当時としては珍しかったベンツを買って往診の時に乗ってたんだけど、何しろ田んぼばっかりの田舎だったから、あぜ道に毛の生えたようなところには大きな外車じゃ入っていけない。だから、県道に車を停めて、そこから先は、トコトコ患者さんの家まで歩いていったんだって。

近田 そのエピソードだけで、どんな人だったか想像がつくよ(笑)。

こぐれ ちなみに、私の母と父は、いとこ同士だったの。母方の清水家と父方の小柴家は、父母以前の代から、互いにお嫁さんを迎えたりして、交流があったのよ。その両親に育てられ、私は、本当に普通の田舎の子として育ちました。

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