八雲の死後、3度来日。そのたびにセツのもとへ

 前にも述べた、八雲の初めての伝記・書簡集『ラフカディオ・ハーンの人生と書簡』は、ビスランドの編集によって刊行されました。これにセツによる『思ひ出の記』も収められ、小泉家に収益が寄付されました。

 ビスランドは八雲の没後3回、来日し、そのたびにセツのもとを訪ねています。セツとも心温まる文面の手紙を交わし、一雄とも良好な間柄を保ちました。日本食を好み、茶の湯や生け花にも親しみました。ワシントンDCの自宅には「音無庵」と名付けた部屋を設け、お茶会などを開き、親日家ぶりを発揮しています。

 自身の夫が他界した後、1922(大正11)年、最後に日本を訪れた時には、八雲が暮らした松江の八雲旧居に足を運んでいます。60歳を超えていました。

「30年ぶりに、あのかけがえのない友人、ラフカディオ・ハーンの美しい心にまた巡り合う。それは、彼がこよなく愛した屋敷に、香炉から漂う香りのように息づいている」

 旧居の芳名録には、そう書き残されています。

小泉 凡(こいずみ・ぼん)

1961(昭和36)年、東京都生まれ。成城大学大学院で民俗学を専攻し、87年から曽祖父・小泉八雲ゆかりの松江市で暮らす。小泉八雲記念館館長、焼津小泉八雲記念館名誉館長、島根県立大学短期大学部名誉教授を務める。著書に『怪談四代記 八雲のいたずら』(講談社)、『小泉八雲と妖怪』(玉川大学出版部)など。

聞き手 木元健二(きもと・けんじ)

1970(昭和45)年生まれ、大阪府出身。同志社大学法学部卒。94年、朝日新聞社入社。大阪本社学芸部、東京本社文化くらし報道部、週刊朝日編集部(いずれも当時)などに勤務。松江総局に 2021年から3年在籍した。

セツと八雲 (朝日新書)

定価 957円(税込)
朝日新聞出版
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