母ローザへの哀惜が表れた「雪女」
雪女の伝承は各地に残っていて、お話としても一様ではありません。八雲の雪女の場合、お雪の正体は妖怪ではありますが、生まれた10人の子の親でもあり、母親としての愛情を強調した物語にしたのです。
自身の母ローザへの哀惜の念が表れていると感じます。前にもふれた松江の大雄寺(だいおうじ)に伝わる、幽霊になってまでも子育てをしたという伝説と同様に、母としてのお雪を描きたかったのでしょう。
「母の愛は死より強し」と結んだ幽霊物語
松江の大雄寺を舞台にした「飴(あめ)を買う女」という物語は、こんなお話です。
むかし、毎晩夜がふけてから、飴屋に水飴を買いに来る白い着物姿の、顔色の悪い女がいました。心配した店の主人が後をつけたところ、大雄寺の墓の前で消えてしまいます。そして地面の下から赤ん坊の泣き声が聞こえます。墓を掘り起こしてみると、女の遺体のそばで泣く赤ん坊と茶わんに入った水飴が残されていました……。
こうした「子育て幽霊」の怪談は国内外に残されていますが、たいていは赤ん坊が英雄になったり、幸福に暮らしたりする結末になっているようです。
のちに再話して刊行した八雲はこの物語を「母の愛は死より強し」と結びました。やは りこの話にも、ほんの幼い頃に母ローザと生き別れた自らの境遇を重ねていたのでしょう。
