この記事の連載
井川 遥さんインタビュー【前篇】
井川 遥さんインタビュー【後篇】
もっと子どもの健康や日常の経験を充実させることにフォーカスしていきたい

――共演された黒崎煌代さんや遠藤憲一さんとのシーンで特に印象に残っているものや、撮影エピソードはありますか?
別荘で夫婦で口論になるシーンがあるのですが、衣裳合わせの後に本読みをしたんですね。監督はもつれた夫婦の会話を少しずつ変化をつけて演出されていたのですが、その度にトーンが変化したりシーンの終着点が変わったり、感情の行方が変化することにとても驚きを感じました。そのシーンの撮影時も、長い沈黙を「こんな話し合いを1時間も2時間もしているように」と、どうにも埋まらない溝を感覚として伝えてくださるので捉えやすかったんです。
黒崎くんや桐生さんは冬編から大きくなったふたりとして登場しますが、幼少期の夏編の撮影の時から現場に足を運んで引き継ぐように役を演じられていて。私自身もとても身近に自然に入っていくことができて助かりました。

――今回は父と子どもの再会や母の喪失といった家族のテーマが取り上げられていますが、井川さんご自身はご家族との距離感をどのように取られていますか?
やっと下の子が中学生になったばかりなのでまだまだ手が離れてはいないですね。行動範囲が広がって家族以外と過ごすことも多くなる年齢なので心配もありますし、学習面でも忙しいからついつい口出ししてしまいがちです。
もっと子どもの健康や日常の経験に焦点を当てたいとは思っていますが、うーん、なかなかそうできないですね。できるだけ前の日のことなどは引きづらずに「新しい朝が来たんだ」と思ってリセットして接するようにはしています。
子どもが成長するたび、わたしたちも経験値のないゾーンに入っていくので、ずっと変化していかなければならない。道のりは長いですね。
井川 遥(Igawa Haruka)
2000年に女優デビュー後、映画、舞台、ドラマ、モデルなど様々なジャンルで活躍。近年は母親や大人の女性、複雑な内面を持つ役柄など幅広い演技で注目され、映画『さかなのこ』では、魚への情熱を貫く主人公の母を演じ、子どもの個性を見守り支える母親を好演。ドラマ『下剋上球児』では、甲子園を目指す高校野球部を取り巻く人々のドラマの中で“姉さん女房”としての強さと温かさを見せた。今秋公開の映画『アフターザクエイク』では主人公善也の母として重要な母性を体現。映画「平場の月」では堺雅人と共演し、35年ぶりに再会する初恋相手を演じる。演技の幅と存在感を増し、さらなる活躍が期待されている。
映画『見はらし世代』
2025年10月10日公開
黒崎煌代、遠藤憲一、木竜麻生、菊池亜希子、中山慎悟、吉岡睦雄、蘇鈺淳、服部樹咲、荒生凛太郎、石田莉子、中村蒼/井川遥
監督・脚本:団塚唯我
配給:シグロ
配給協力:インターフィルム、レプロエンタテインメント
https://miharashisedai.com/

2025.10.04(土)
文=前田美保
撮影=佐藤亘
ヘア&メイク=松田麻由子
スタイリング=青木千加子