この記事の連載

私、別に東京に住んでもいいじゃん!

――絵日記でも触れていましたが、東京で暮らすという選択肢は、これまでまったく頭に浮かばなかったのでしょうか。

 まるで考えていなかったのですが、「私、別に東京に住んでもいいじゃん!」と思ってから、気持ちが固まるのはかなり早かったです。一度その考えが浮かんだら、どうして今まで自分の人生の選択肢から外れていたのか不思議なくらいで、決断して本当によかったです。

――ちなみに実家に戻って老犬の介護をしているとき、その後のことは考えていなかったのでしょうか。もし今みたいに上京していなかったら、今後について何かしら思い描いていたことはあったのでしょうか。

 仕事をやめて実家に帰ったときは、老犬との別れが差し迫っている状況でした。なので、自分が納得いくまでお世話して、看取りたいっていうことしか考えていなかったのですけど、老犬が元気を取り戻して、思いのほか長生きしてくれて。おかげで楽しい時間を過ごせたのですが、老犬とお別れしてから自分はどうするか、そのとき何歳になっているのかなど、先のことは一切考えていませんでした。

“前世からの友”は本当に特別

――本当にいろんなタイミングが重なって、上京が現実的な選択肢として浮かんできたのですね。一方で上京することによって、“前世からの友”と物理的な距離が離れてしまうことに、これまでのシリーズの読者の方たちは、一抹の寂しさをひそかに抱いていたのではないかと思います。新シリーズで全員が揃うシーンは、「待ってました!」と言いたくなる嬉しい展開でした。

 近年すごく思うのは、大人になってからの友人関係は、維持するためにお互いの努力が必要だということです。女性の場合は特に、ライフステージの変化によって、遊べる頻度や内容がだんだん変わってくるのを、実感せざるを得なかったりします。でも“前世からの友”に関しては本当に特別で。もちろん今までとまったく変わらない関係性は難しいし、学生の頃のように、ちゃんと約束しているわけでもないのになんとなく集まることはできません。だけど今は今なりの距離感、付き合い方で、その都度楽しく遊ぶことができています。ちなみにまた近々、みんなで会うことになっています。全員の予定を合わせて、調整するのは結構気合がいるんですけど、その努力を怠らずにいい関係を維持できていると思います。

2025.06.29(日)
文=兵藤育子