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中国パンの可能性を信じて来日。口コミでまたたく間にブレイク

 店頭の立て看板に堂々と書かれた「日本唯一の手作り中国パン店」。店に並ぶパンは毎日50種以上と品数多く、すべて手作りしています。日本人にほとんどなじみのない「中国パン」の店を東京に開いたのは、店主の劉惢さんの中に「日本の方もきっと好きになってくれる!」という強い確信があったから。来日当初は日本語が話せなかったというから、かなりのチャレンジャーです(猛勉強して、今は日本語堪能!)。

 劉惢さんはハルビン出身で、大連育ち。小麦粉料理をよく食べるエリアで、ご両親もお焼きや蒸しパンの店を経営したり、パイを作る店だったり、水餃子の専門店をやっていたこともあるそう。

「中国にはさまざまな小麦粉料理があり、それぞれに必要なテクニックが異なるため、パイ専門店、マントウ(饅頭)専門店、油条専門店と、ジャンルごとに店を構えています。さらに、地域によって食べるものや製法が違い、それぞれのよさがあります。しかし、私たちのお店はあえて専門店にせず、中国各地の味を一店舗に集めました」

 東京のお店で作っているものは、すべてお母様から受け継いだレシピがベース。小麦粉は国産をセレクトし、添加物は使わない。でも中国本場の味の再現は妥協せず、理想の味に仕上がる小麦粉に出合うまで、何度もトライ&エラーを続けたといいます。

 2022年にオープンし、口コミでまたたくまにブレイク。日本に住む中国人が興奮しながら全種類1個ずつ買って行ったり、中国通の日本人が足しげく通っていたり。スタッフが1個1個のパンを丁寧に説明してくれるから、中国パンに初めて触れる人も興味深々であれこれ買ってしまうそう。「ねじねじパン」など、パンのネーミングも分かりやすい!

「店名の“面食”とは、小麦粉で作った食べものという意味なんです。だから、パンだけではなく、パイやお菓子、水餃子なども作っています。でも「面食」では日本の方にはわかりづらいかと思い、徒歩圏内に開いた2号店は『麦100%』という店名にしました」

 現在は劉惢さんのご両親と叔母さんも来日し、店舗を増やしても味を落とさず、一族総出で“面食”を作る日々。中国パンへの愛と情熱が、店に並ぶパンから立ち上っています。

劉記 中華面食(リュウキ チュウカメンショク)

所在地 東京都江戸川区松島3-14-3
電話番号 03-5661-3080
営業時間 8:00~20:00
定休日 なし
交通 JR新小岩駅より徒歩7分
Instagram @liujimianshi

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2025.06.28(土)
文=嶺月香里
写真=鈴木七絵