この記事の連載
『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』前篇
『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』後篇
「ジェヒには『男を見る目を養えよ』と言ってあげたい(笑)」

――お二人が演じたキャラクターは、一見わかりやすそうですが、内面を覗いてみると複雑で、演じるのが難しそうだと思いました。演技をしながら共感できた部分、理解が難しかった部分はありましたか?
ノ・サンヒョン 僕は一つ一つのセリフ全てに共感できました。特にどのセリフ、というのは(ネタバレになってしまうので)難しいですが、映画をご覧になる方にも共感していただけると思います。
キム・ゴウン ジェヒは、ものすごく自由奔放で恋愛体質に見えるけれど、たくさん傷つけられてきたせいで傷つくことを恐れていて、自分自身を愛することができず、自分が望んでいることが何なのかもわからない。実はとても防衛機制を働かせている人なんです。
この作品はそんなジェヒの「自分探し」の過程、ジェヒの成長にフォーカスしています。私はジェヒという人物そのものに心から共感しました。一番共感したのは、20代ならではの「不安感」です。それは、どんな方法で経験するか、どんな方法で表現するかは人によって異なりますが、私だけでなく、20代以上の全ての人が経験してきた感情だと思うので、多くの方に共感していただけるのではないでしょうか。
また、ある一定のルールがあって決まった通りの道を進めばよかった学生時代から、大人になって突然社会に投げだされた二人の葛藤にも共感しました。理解できなかったのは、ジェヒの男を見る目のなさです(笑)。演技しながら、いらいらしちゃいました。

――ゴウンさんは、ジェヒよりも男性を見る目がある、と?
キム・ゴウン もちろん! 見る目はある方です(笑)。

――ジェヒがご自身の親友だとしたら、どんな言葉をかけてあげますか?
キム・ゴウン 韓国には、〈도시락 싸들고 다니며 말리기(お弁当を持って行って引き留める)〉という言葉があります。必死に止めるという意味です。ジェヒが本当に親しいお姉さんであれば、「その男はない!」と言って、なんとかしてジェヒの恋を止めますね。
ノ・サンヒョン 僕も「もうちょっと男を見る目を養えよ」と言ってあげたいです(笑)。
キム・ゴウン 真面目な話をすれば、ジェヒは、強そうなフリ、なんでもないフリをしているけど、本当はもろくて、なんでもなくない。そういうジェヒの隠れている本音に気づいてあげられる友達が必要なんじゃないかと思います。だから、「本当はそうじゃないでしょ?」と言って体を優しくなでてあげたいです。

――では、フンスにはなんと言葉をかけますか?
ノ・サンヒョン 「自分の人生を、一生懸命、勇気を持って歩んでほしい」と伝えたいです。彼らしい生き方を応援してあげたいです。
キム・ゴウン そうですね……。「あなたに圧力をかけていい人は誰もいない。あなたの心の準備ができるまで何も話さなくてもいいし、無理しなくていい。人々から受ける重圧から自由になってほしい」と言いたいかな。
2025.06.19(木)
文=酒井美絵子
撮影=平松市聖