おばあちゃん役にほとんど素人を抜擢
——おばあちゃん役はオーディションで100人以上のベテラン女優に会っても決まらなかった。そんな時に古いミュージックビデオに出演しているウサー・セームカムさんを発見して抜擢しました。
監督 おばあさん役はなかなか決まらなかったので、スタッフ全員に誰かおばあちゃんを知っているかと聞いたら、助監督が5年前に作ったミュージックビデオに出ている彼女を紹介してくれたんです。すぐ彼女が気に入りましたが、演技の経験がほとんどないので心配だったことも事実です。ウサーさんはすべての自分のセリフを紙に手で書き出して、暗記していました。ショット数は最小限に抑えて、疲れが見えたらすぐに休んでもらい、リフレッシュしてから撮影するように心がけました。

——おばあさんのもの静かな佇まいがとても素晴らしく、各国で大人気になっていますね。
監督 実際のウサーさんは、とても優しくて可愛い人で、現場に来ると私とかビルキンとかカメラマンとか、もうスタッフ全員にハグして挨拶してくれるような人です。一方、映画の中のおばあちゃんは、愛しているとも言わないし、体に触れてくることも一切ない。なので、ウサーさんには感情を隠して顔に出さないでください、心配していてもいいけど顔には出さないでください、と伝えました。表面に感情が出ていなくても、内心の葛藤を表しているのです。
——日本の観客にメッセージはありますか。
監督 今回の映画は私自身、そして私の父、母、祖母、兄弟たちの実際の経験を映画という形を通じて皆さんに伝えていくような作品です。きっと、日本の皆さんに理解と共感をしていただけると思います。
『おばあちゃんと僕の約束』
監督:パット・ブーンニティパット/出演:プッティポン・アッサラッタナクン(ビルキン) 、ウサー・セームカム、サンヤー・クナーコン、サリンラット・トーマス他/2024年/125分/タイ/原題:Lahn Mah/© 2024 GDH 559 CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED/配給:アンプラグド/6月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

2025.06.16(月)
文=週刊文春CINEMAオンライン編集部