タイには今までこういう映画はなかった

——おばあちゃんの家はとても素敵なお家でしたが、実際に存在する家でロケをされたんでしょうか?

監督 はい、実際にある家です。ロケ地を探しているときに、あの家が売りに出されていることを知ったんですが、家主に連絡して撮影することができました。家の内部がとても綺麗だったので、実際に家の中にあった家具など約30%をそのまま映画でも使っています。映画がヒットしてこの家が有名になったので、もう一度家主が売りに出したんですけど、今でもまだ売れていません(笑)。細い路地の奥で車が入れないような場所だからだと思います。

——もし日本のこの映画のファンが関心があれば買えるかもしれない?

監督 (笑)そうですね。

——そもそも、監督はなぜこの題材を映画にしようと思われたのでしょうか?

監督 タイではこういうタイプの映画はほとんど作られていないんです。家族と社会に関するテーマをあつかった日本映画の大ファンだったので、この映画のあらすじを聞いた時に日本映画を観た時と同じ感動を覚えました。もちろん同じような作品ができるわけではないんですけれども、映画の言語を使って、新しいタイプのタイ映画を生み出したいと思ったわけです。

——そしてこの映画は大変なヒットとなり、アカデミー賞のショートリスト入りもしました。この理由をどのようにお考えですか?

監督 やはり孫とおばあちゃんという世代を超えた関係性が共感を呼んだから、世界中に届いたのではないかと思います。おばあちゃんは自分の子どもと違って、孫には無償の愛を与えるばかりなんですよね。無償の愛を受けた孫の深い気持ちを掘り下げることによって、おばあちゃんと孫の特別な関係を描けたと思いましたし、そういった世代を超えた関係というのは、やはり普遍的なものなのだろうと思っています。

2025.06.16(月)
文=週刊文春CINEMAオンライン編集部