書斎デスク付きの快適な1人部屋

 赤い絨毯が敷かれた階段を一歩一歩上るたびに、時の流れがゆるやかにほどけていくような感覚に包まれる。

 傾斜地に立つ古い建物のためエレベーターはなく、館内は4層構造。セミダブルベッドが置かれた1人部屋は4階半と呼ばれる場所にある。複雑に入り組んだ造りは、この宿に刻まれてきた時間の厚みを感じさせてくれる。

 館内1階にある読書室は、クラシックな家具が置かれた静けさとぬくもりが漂う空間だ。一方で客室はリニューアルされていて、水回りも快適に整えられている。

ADVERTISEMENT

 この1人部屋にはデスクライトや書斎デスク、Wi-Fiが備わっており、読書やパソコン作業にも最適。落ち着いた雰囲気の中でゆったりと過ごすことができる。

ぬるめの湯で緊張をほどき、副交感神経を整える

 この宿のかけ流し温泉は浴槽ごとに温度が異なり、熱いほうから43℃、40℃、38℃に設定されている。

 38℃のぬるめのお湯は副交感神経を優位にする作用があり、体の緊張を解きほぐして、リラックスモードへと導いてくれる。普段、忙しく動き続けている思考も、徐々に落ち着いていく。

ADVERTISEMENT

 今日は何もしない。せっかく書斎があるけれど、スマホもパソコンも開かない。こんな時間をつくることが、脳の疲労を回復し、心を穏やかにするための解決策になる。忙しすぎる毎日を送る人は、ぜひこのような宿で心身をリセットする日をつくってみてほしい。

2025.06.26(木)
文=野添ちかこ
写真=平松市聖