同じそばなのに別世界がそこにあった 

 西荻窪に店があった10年前頃、ある時、築地に買い出しに行き、何気なく入った店が築地2丁目にある「天花そば」だったという。出てきたそばは、正直、手打ちのそれよりは小麦粉も多い、細めのうどんのような生そばである。しかし、そのつゆ、天ぷらと合わさると、素晴らしい一体感、バランスが生まれていることにはっと気がついたという。この時初めて「立ち食いそばには自分が切磋琢磨している手打ちそばにはない、別の味の世界があることを認識・発見した」というわけである。

 つい先日も、本蓮沼にある深夜営業の「そばひろ」に行き「春菊天太そば」を食べて感動したという。勢い余って、「カレーそばソーセージ天」もお代わりしたという達人ぶりだ。

 さらに立澤さんは面白い実験も行っている。茹で麺を仕入れて、自分の店のつゆでかけそばを作って食べてみた。すると立澤さん「これは合わない! ただ優しい味のそばになるだけ?」だったという。味の違いをもたらす要因は何かを探る日々が続いているというわけだ。

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立澤さんおすすめ立ち食いそば「私のベスト3」 

 ちなみに、立澤さんおすすめの立ち食いそば「私のベスト3」を聞いてみた。

 まず、1軒目は田端にある「立喰そば かしやま」。こちらは自家製麺でツルツルでコツッとした硬さがあるとか。天ぷらもつゆも自家製。

 朝6時から10時までの営業の店だ。「こちらの凛とした佇まいと雰囲気と滋味深い味がたまらない」と立澤さん。

 2軒目は大久保駅近くの「長寿庵」。

「ジャンクなつゆがうまくてたぬきそばが絶品」とか。

 3軒目は立ち食いではないが台東区千束1丁目にある「ねぎどん」。

 カウンターだけの大衆店だが、手打ちそばを提供している所に感心しているようだ。

2025.05.26(月)
文=坂崎仁紀