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マカオに来なければ味わえない唯一無二の料理

◆モダンマカオ料理

 観光大学に併設された「UTMエデユケーショナル・レストラン」は、観光業を志す学生たちが、実践の場として接客やサービスを担うユニークなレストラン。とはいえ実習用の域をはるかに超え、雰囲気、味、盛り付けのセンスは一流。ミシュランのビブグルマンにも2013年から連続で掲載されている。

 提供されるのは、定番のマカオ料理をモダンに再構築した料理。地元食材と伝統的な技法、ヨーロッパやアジアのエッセンスを繊細に重ねた味わいが特徴だ。店内には、豊富な銘柄をそろえた立派なワインセラーもあり、ワイン好きにも愛されるレストランだ。

 たとえば、マカオ家庭料理の代表格「ミンチィ」。本来は、甘辛く炒めた豚ひき肉とタマネギにフライドポテトと目玉焼きを添え、ご飯にのせて食べる、そぼろ丼のような一皿だ。この店ではその伝統的な料理を、大豆ミートを使って軽やかにアレンジ。しっかりとした味わいながら、ワインにもよく合う一品に仕上がっている。

 サステナビリティへの意識も高く、キャンパス内で栽培されたハーブの活用や、食品ロスを抑える工夫など、環境への配慮が随所に。窓の外には美しい緑が広がり、サービスに懸命に励む学生たちの姿もほほえましく、心が和む。

UTM Educational Restaurant(澳門旅遊大學教學餐廳)

所在地 Macao University of Tourism, Colina de Mong-Há
電話番号 +853-8598-1416
営業時間12:00~15:00(L.O.14:00)、18:30~22:00(L.O.21:00)(土曜はブッフェのみ)
定休日 日曜・祝日
https://www2.utm.edu.mo/RESTAURANT/index.php/en/

◆マカエンセ料理

 西洋と東洋が入り混じるマカオの風景を、さらに独特なカラーに彩るのが、マカエンセ(ポルトガル人の血をひくマカオ人)の存在。彼らに受け継がれる家庭料理は、マカオ住民の9割以上を占める中国人の家庭料理とは異なる、究極のフュージョン料理だ。

 マカエンセ料理は、各家庭で母から子へと受け継がれてきたもので、旅行者が味わえる機会は多くない。そんな希少な味を体験できるのが「カーサ・マキースタ」。

 場所はタイパ地区、1921年に建てられた邸宅群を博物館にした「タイパ・ハウス・ミュージアム」の一角にある。湿地を挟んだ対岸には、コタイ地区のきらびやかなIR群が広がり、マカオらしいコントラストを感じられるロケーションだ。

 代表的な料理のひとつが「カペラ」。豚ひき肉やポルトガルの燻製ソーセージ、黒オリーブ、松の実などを混ぜ合わせてオーブンで焼き上げた、味わい深い一皿だ。ごはんにも合い、日本人の口に馴染む。

 「タッショ」は、チキンやポーク、野菜を豪快に煮込んだシチュー。タッショとはポルトガル語で鍋を意味するとおり、冬の家庭料理として親しまれてきた。料理に添えられる濃厚なペースト「バリシャオン」は、エビの発酵ペーストをベースに、ブランデーやハーブを加えて仕上げたもの。ほんのひと匙添えるだけで、味わいに奥行きが加わる。

 店内には、マカエンセの家庭で使われていた調度品が並び、まるで誰かの家に招かれたような温もりが。食後に隣接するミュージアムで当時の暮らしぶりをのぞけば、より深い余韻に浸れそうだ。

Casa Maquista(土生公館)

所在地 G/F, Taipa Houses, Estr. de Cacilhas, Vila de Taipa
電話番号 +853-6217-6332
営業時間 10:00~22:00
定休日 無休
Instagram @casamaquista

2025.04.17(木)
文=芹澤和美
写真=SHU ITO