マカオで出会う、広東宮廷料理の真髄

マカオはユネスコの「食文化創造都市(シティ・オブ・ガストロノミー)」に認定された街。広東料理、ポルトガル料理、そしてそれらが融合したマカオ料理まで、小さな土地に、驚くほど多彩な味が詰まっている。もちろん、いずれも由緒ある本場の味わいだ。
◆広東料理
なかでも広東料理は、本場中の本場。街にはローカルな食堂から格式あるレストランまで、あらゆるスタイルの店がひしめいている。
そんな中でひときわ存在感を放っているのが、「グランド・リスボア・パレス・リゾート・マカオ」のファインダイニング、「パレス・ガーデン」。マカオで唯一、限られた料理人にしか受け継がれない広東宮廷料理「太史菜」を味わえるレストランだ。その伝統は、現代の感性で美しく昇華されている。

ここを訪れてまず感じるのは、空間そのものが一つの物語になっているということ。中国古典小説「紅楼夢」をモチーフにデザインされた廊下を抜けた先に広がるのは、ハンドメイドの両面刺繍が壁を飾るダイニング。細部にまでこだわった美しい設えが、静かに物語の世界へと誘う。

若きエグゼクティブ・シェフの莊嘉輝(Ken Chong)は、「太史菜」の正統を継ぐ一人。伝統を学びながらも、各国のキッチンから著名人宅でのプライベートディナーまで、多彩な経験を重ねてきた。

煌びやかな空間で供されるのは、決して奇をてらうことなく、凛とした美しさを湛えた料理。「料理を通して、マカオでの旅の記憶に残る体験を届けたい」と語る莊シェフの言葉どおり、その一皿一皿には、惜しみない手間と時間が注がれている。


ここでの食事は、非日常の空間に身を委ね、美しい物語に浸るような感覚で楽しんで。訪れるなら、ランチでも最低2時間。旅先ではつい予定を詰めがちだが、ここでは時間をしっかり確保して、存分にその世界に浸りたい。

Palace Garden(御園)
所在地 Level 3, Grand Lisboa Palace Resort Macau (South Entrance)
電話番号 +853-8881-1380
営業時間 12:00~14:30、18:30~22:00
定休日 火曜
https://www.grandlisboapalace.com/en/restaurants-n-bars/palace-garden
2025.04.17(木)
文=芹澤和美
写真=SHU ITO